日本代表 2023.05.26

2023年のテビタ・タタフ。秋のワールドカップで「優勝したい」と決意。

[ 向 風見也 ]
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2023年のテビタ・タタフ。秋のワールドカップで「優勝したい」と決意。
ワールドカップを見据えるテビタ・タタフ。昨秋のフランス戦などでも活躍した(撮影:松本かおり)


 テビタ・タタフにとって、2023年は特別な年だ。

 日本代表が挑むワールドカップ・フランス大会は今秋にあり、タタフは戦線離脱中ながら代表候補に名を連ねている。

 現在は代表スタッフから託されたメニューで身体を整え、6月からのキャンプで段階的に調子を上げる。7月以降の本格合流を目論む。

 大一番を終えれば、大会開催国のリーグで暴れる。来季から、同国トップ14のボルドー・ベグルへ加わる。いまはまず、自身にとって初出場となるワールドカップを見据える。

「前回のワールドカップ(2019年の日本大会、8強入り)を越えるようなトレーニングを。もちろん、優勝を目指す」

 サモアで生まれ、まもなく母国のトンガへ移住。タロイモやスイカを育てる農家の長男だった。

 祖父の病気を診てくれた医師に憧れ、子どもの頃はドクターを目指した。勉強は得意だった。一方、6歳で始めたラグビーで才能を開花させた。12歳になったあたりから、海外でのプレーを視野に入れた。

 東京の目黒学院高の竹内圭介に誘われ、母国でチームメイトだったアタアタ・モエアキオラとともに来日。到着した日は雪が降っていて、Tシャツ、短パン、ビーチサンダル姿だったタタフは寒さに震えた。

 中学3年冬、目黒学院中へ編入した。高校に内部進学後は、長時間の練習、オフも門限5時という寮のルール、電車の座席に座ってよいのは3年生だけという不思議な上下関係と向き合いながら、楕円球を追った。

 東海大を経て東京サントリーサンゴリアスに入ったのは、ワールドカップ日本大会のあった2019年。2016年に初選出された日本代表には2021年より定着し、一時は減量と走り込みを強いられながら試合では爪痕を残した。

 いまは身長183センチ、体重124キロの巨体で、迫力ある突進、ジャッカルを重ねる。本大会でも、チームきっての核弾頭として大暴れするか。

 多国籍軍となる日本代表での海外出身者の立ち位置について、こう決意を明かす。

「プレーではフィジカル。オフの時はトンガ語なしで、必ず日本語でコミュニケーションを取りたいです」

 英語圏の外国人選手にもなるべく日本語を覚えてもらったり、ミーティングでは毎回、違う席に座っていつも異なる味方と話をしたりと、チーム作りをサポートしたいという。

 支えるのは家族も然り。父、母はもちろん「弟、妹5人、(下の)弟2人」に頼られる。最近では、地元マタイカの実家を修繕した。本当は新築を建てるつもりだったが、両親から「(リフォームで)大丈夫だよ」と言われたという。家族の存在を原動力にする。

 27歳。「40歳」までは現役選手でいたい。

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