日本代表 2023.05.26

「夢は大きく。強い意志を持って」。日本代表初選出。木田晴斗のメンタリティ。

[ 向 風見也 ]
「夢は大きく。強い意志を持って」。日本代表初選出。木田晴斗のメンタリティ。
今季リーグワンで大活躍だったスピアーズの木田晴斗(撮影:松本かおり)


 哲学を言動に表す人だ。

 5月24日に発表されたラグビー日本代表36名に、木田晴斗が名を連ねた。初選出である。

 当面の目標は、今秋にあるワールドカップ・フランス大会のメンバーに入ることだ。

 同日、所属するクボタスピアーズ船橋・東京ベイ主催のオンライン会見に出席。こう言い切った。

「(日本代表の)メンバーに絡んでいくのが今季の目標でもありました。結果が出て嬉しかったです。ただ、(本当のゴールに)達成したわけではないので、ここから再スタートしたいです」

 身長176センチ、体重90キロの24歳。関西大倉中、高では無名の存在も、立命館大では1年時からブレイクした。有望な若手の集うジュニア・ジャパンにも入り、2022年春、誘われた複数クラブのうちスピアーズを選んだ。

「もともと高校生の頃から海外で活躍できる選手になりたいと(宣言している)。日本代表のもう一段階、上を目標にして、口に出して言うようにしていて」

 有言実行の習慣があるのは少年期からだ。中学1年まで習っていた極真空手では、小学4年時に世界選手権で優勝。その頃から、大会前には周りに「世界一になります」と言い切っていたという。

「夢は大きく。親の教えです。がんばりますとかじゃなくて、しっかり(目標を)口に出す。そうすると自分にもプレッシャーがかかるし、それに勝てるような人になる…。父親から『メンタル弱い』と言い続けられてきて、気づいたら(メンタリティが)強くなっていたんじゃないですかね。気づいたら負けず嫌いですし、自分も強い意志を持って、スポーツに取り組む方だった」

 規定上、国内リーグワン1部に開幕から参加したのは今季からだった。開幕から主戦WTBとなり、リーグ2位の16トライを奪取。シーズンでもっとも防御ラインを破った選手が輝く、ベストラインブレイカーにもなった。

 準備が実った。ワールドカップ開催年の日本代表入りへ、準備期間には身体を2~3キロほど絞っていた。

「身のこなし方がよくなったり、身体にキレが出たり。一瞬のパワーも強くなった」

 具体的なトレーニングの頻度や日数について聞かれれば、「そこまで、覚えてないです」。なぜか。

「ここまでがむしゃらに突き進むイメージで毎日を過ごしていたので」

 シーズン中から前向きな報せをもらっていた。日本代表のトニー・ブラウン アシスタントコーチと交流のあるスピアーズの田邉淳アシスタントコーチを介し、代表陣営に注目され始めていることを知った。

 そしてリーグが終盤戦に差し掛かろうとしていた3月下旬、候補選手によるミーティング合宿に初参加できた。

 左足のキック、空中戦で発揮されるフィジカリティを評価された。

 逆に課題と指摘されたのは、防御時の出足や周りとの連係だった。そちらは普段の練習で再点検。するとクラブ史上初の優勝を果たすプレーオフで、好守を披露できた。

 5月20日の東京・国立競技場でのリーグワン・プレーオフ決勝では、昨季王者の埼玉パナソニックワイルドナイツに挑んだ。味方のキックを追いかけながらのタックルで相手の反則を誘い、チームの得点をおぜん立てした。

 後半29分には自ら勝ち越しトライを奪ったのもあり、17-15で勝った。ヒーローのひとりとなったが、向上心は絶やさない。

「キックチェイスでプレッシャーをかけるのは得意なのですけど、そのなかでのフィートコントロール(相手との間合いの調整)はまだまだ伸ばしていかないといけないところです。あとは(ボールを)競りに行くのかどうかの判断も。まだまだ伸びしろがあるなと感じます」

 リーグの新人賞の座は、ワイルドナイツの長田智希に渡った。

 木田はかねてこのタイトルについて「意識しない」と話してきたが、いざ自分以外の人間がその栄誉を味わっているのはどう捉えたのだろうか。

 式典後の取材機会で応じた。

「そこに関してはね、何も言わんとこうかなと。ノーコメントと書いておいてください」

 今回の会見でも、長田にちなんだ問いが飛んだ。

 長田は東海大仰星高、早大で日本一になったことがあり、先のプレーオフ決勝ではWTBの対面となっていた。今度の日本代表でもCTBとして初選出された長田への対抗心を問われ、木田はこう応じた。

「もちろんワイルドナイツ戦の時に対面になると決まった時は、ライバル視しました。それと、周りがそうやって(ルーキー対決の構図について)言ってくれるだけで盛り上がる。それはありがたいことでした。だけど、個人としてはそこまで(意識していない)。とにかく優勝したい気持ちがあったので、そこにフォーカスを当てました」

 自分が信じた道を妥協なく突き進んだから、自分と同じ舞台に這い上がってきた好敵手を称えられる。少なくとも、そのようにしようと思える。

「たぶん、長田もこの(自分が選んだ)道でめちゃくちゃ努力している。僕と道が違っても、それまでやってきたこと(努力)は一緒。どの道があってる、間違ってるというのはないと思うんですよね。ただ、どの道でも向上心を持って取り組むのが大事。(長田は)それをしたから、あれだけ活躍したんだと思います」

 日本代表合宿は6月12日、千葉県内で始まる。木田はこれからも、自分の「道」と向き合う。理想の選手像を聞かれれば、リアリスト然として述べる。

「ジャパンのコーチ、スピアーズのコーチからWTBとして求められるスキルについて取り組んでいけばよくなっていける。(理想の)選手像(を追い求める)というより、必要なスキルを磨いていって、選手として成長したいです」

 指導者のオーダーを念頭に置いたうえで、己の「道」をゆく。本当のプロ選手だ。

PICK UP