日本代表 2023.05.03

フルパワーでできるラグビーが好き。ジュニア・ジャパンに緊急招集、高橋拓光[朝日大3年/LO]の思い。

[ 明石尚之 ]
フルパワーでできるラグビーが好き。ジュニア・ジャパンに緊急招集、高橋拓光[朝日大3年/LO]の思い。
高橋拓光は朝日大の3年生。PR吉田潤一朗とともに松韻学園福島から進学(撮影:松本かおり)

 100㌫のぶつかり合いを好む。だから、自分にはラグビーが向いていた。
「他のスポーツでいうファールができるというか(笑)、ラグビーにしかない自由さがある。戦いたい、と思った時にフルパワーを出せる」

 この競技を始めたのが小学5年。当時から「ガタイはよかった」から、兄の友人の親に勧められた。通った小学校がタグラグビーに力を入れていたとあり、楕円球には以前から親しみがあった。

 それから10年が経ち、高橋拓光は朝日大の3年生になった。190㌢、110㌔と立派な体躯。果たして、ポジションはもっとも頑健でなければならぬロックだ。
 この春、ジュニア・ジャパンの遠征メンバーに選ばれた。緊急招集だった。

「(直前合宿の)2、3日前に呼ばれました。最初はいきなりで驚きましたが、ケガでの交代(LO井上茉紗樹)ということで、いまはケガした選手の分まで自分の役割を果たせるように頑張りたいと思っています」

 メンバーで唯一、主要3リーグ(関東対抗戦、リーグ戦、関西リーグ)の出身ではない。その責任感も強い。
「今回はラッキーでしたが、毎年東海(リーグ)から選ばれるように、その入り口になりたいです。自分が良い選手であれば、『次も東海から』となると思うので」

 2月から3度に渡って行われた、セレクション合宿すべてに参加した。結果的に落選するも、「そこで自分の足りないものがわかった」という。
「ラック周りの細かなコミュニケーションやサポートのところです。例えばアタックの時に、味方(ボールキャリアー)にしっかり密着できなくて、数的優位を作れなかった。合宿を終えてからは、そこを課題にこれまでと全然違う質の練習ができていました。なので、(急な招集でも)準備はできていました」

 セレクション合宿では、一方で自分の武器も再確認できた。1対1でのボールキャリー、パワーでは同世代のトップとも引けを取らない。
「あまり有名な高校ではありませんが、松韻福島の田中(瑞己)先生が厳しくて(笑)。そこでウエートも強くなり、1対1のこだわりが培われました」

 3年時には同校を6年ぶり2度目の花園に導く。強みは圧倒的な練習量を割くモールだった。朝日大の仲間からも、塊が前に出られた時に崩れないよう的確にカバーしてくれると褒められる。
 花園の初戦(尾道戦)ではその武器を逆手に取った。機転の効く選手とわかる。

「尾道はディフェンスに自信を持っているので、ワイドに開いていた。だからモールではなく、FWのフィジカルを前面に出して回していこうと。自分の判断で決めました。途中までうまくいったのですが、インターセプトされてしまって…」

 懐かしい思い出を振り返ったのは、サモアに飛び立つ前日(4月27日)。桜のジャージーを背負って戦う遠征を前にして、「いまは(緊張よりも)ワクワクの方が強い」と笑顔を見せる。

 高校の時から海外遠征には憧れがあった。きっかけは、コベルコカップに出場するU17東北代表のセレクションだ。コロナ禍で中止となったが、例年であれば同大会で活躍するとU17日本代表として中国や韓国と戦えた。
 結果、東北代表にも手は届かなかったけれど、代表への”パスウェイ”を初めて目の当たりにして目の色が変わった。

「大学でもラグビーがしたいと思うようになりましたし、自分の実力では歯が立たなかったので、自分が変わるきっかけになりました。その練習で里コーチ(大輔・高校代表スピードコーチ)が来てくれて、すぐにレベルアップできたことも大きかったです。成長する楽しさを知れて、レベルの高いところでやりたいと。今回選ばれたのも、そうした”ラグビーが好き”という姿勢を評価されたと思っています」

 世界を体感し、愛するこの競技でまた努力したいと思える肥やしにする。

福島少年RSから中学では兄の大学進学に伴い仙台へ引っ越し、仙台RS所属に。高校(松韻学園福島)で福島に戻ってきた(撮影:松本かおり)

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