ラグビーW杯前年にウェールズ代表の指揮官交代。ピヴァック解任、ガットランドが復帰。
ラグビーワールドカップ2023まであと9か月と迫るなか、ウェールズ代表のウェイン・ピヴァック ヘッドコーチが解任された。2019年末から指揮を執り、テストマッチ34試合を戦って13勝1分20敗(勝率38%)。昨年はシックスネーションズ(欧州6か国対抗戦)優勝に導き、今夏の南アフリカ遠征では前世界王者の同国代表スプリングボックスを倒したが、今年は最終的に12戦3勝9敗と低迷。3月には、シックスネーションズ36連敗中だったイタリア代表に地元カーディフで敗れ、11月のオータムネーションズシリーズではまたもホームで格下のジョージア代表に12-13と屈辱的な敗北を喫し、厳しい批判にさらされていた。
そして、オータムネーションズシリーズのレビューを終えたウェールズラグビー協会は、理事会を経て、12月5日にヘッドコーチ交代を公式に発表した。
ワールドカップ前年の非常事態にチーム再建を託されたのは、前回の2019年ワールドカップまで12年間ウェールズ代表の指揮を執ったニュージーランド人のウォーレン・ガットランドだ。帰国してチーフスのヘッドコーチ(のちにディレクター・オブ・ラグビー)を務めていたが、ウェールズとニュージーランドの両ラグビー協会が同意してチーフスの契約から解放されることが認められ、3年ぶりにウェールズに戻り、世界ランキング9位まで落ちてしまった“レッドドラゴン”を奮い立たせることになった。
ガットランドは前回ウェールズ代表を率いた期間、ワールドカップ3大会で指揮を執り、2011年大会と2019年大会ではベスト4に導いた。シックスネーションズでは4回優勝(そのうち3回はグランドスラム)、最後のシーズンには14連勝を記録し、初めて世界ランキング1位に押し上げた名将である。
そして、ブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズも3度(2013、2017、2021年)指揮したことがあるガットランドをめぐっては、イングランドラグビー協会も熱視線を注いでいたといわれ、プレッシャーをかけられている同国代表のエディー・ジョーンズ ヘッドコーチに代わる有力候補として名前が挙がり、今週、イングランドの指揮官に電撃就任するのではないかという憶測もあったが、ウェールズラグビー協会が先手を打って王将を獲った形となった。
ウェールズ協会のスティーヴ・フィリップスCEOは、ワールドカップまで1年を切ったなかでの難しい決断だったとし、「私たちは最終的に結果が求められ、ウェールズの現在の軌道は私たちが望んでいる場所ではないということをウェイン(ピヴァック)と同意した。過去3年間の彼のヘッドコーチとしての時間、熱意、勤勉さ、そして努力に心から感謝している」と語った。
ピヴァック本人は、「残念ながら、今年の結果やパフォーマンスは私たちが望んでいたものではなかった。グループとして、私たち全員がその責任を負っているが、特に私はヘッドコーチとして責任がある」とコメントしている。
ガットランドについてフィリップスCEOは、「国際試合において最高のコーチのひとり。彼が戻ることに同意してくれて嬉しい。私たちは彼のことをよく知っているし、最も重要なことは、彼も私たちのことをよく知っているということ。ウェールズとウォーレン・ガットランドの新しい章にすごく興奮している。彼は間違いなく、2008年に初めてウェールズ代表に加わったときと同じように、すぐに影響を与えることができるだろう」と期待した。
そして、大役を引き受けたガットランドは、「ウェールズのコーチに戻ることを楽しみにしている。ラグビーに情熱を注ぐ国で、才能ある選手たちと一緒に何かを成し遂げるチャンス。感慨にひたっている時間はほとんどない。プロスポーツは準備、価値観、結果がすべてだ。限られた時間のなかで最大限の準備をしなければならない。私たちはお互いを大切にし、尊重し、懸命に働き、これがうまくいけば、パフォーマンスと結果がついてくる」と述べ、チーム再建への覚悟を示した。