コラム 2022.11.03

【コラム】サイズを超えて。

[ 直江光信 ]
【コラム】サイズを超えて。
195センチのジャクソン・ヘモポ。サイズの悩みを抱えながらも、2017年にマオリオールブラックス、2018年にはオールブラックスに選出された。2019年からは三菱重工相模原ダイナボアーズ所属。写真は2018年6月23日のフランス戦。途中出場で初キャップし49-14の勝利に貢献した。24歳だった(Photo/Getty Images)

 フィールドに立つ誰もが100パーセントの姿勢で役割を果たす現在の日本代表スコッドの中でも、個人的にもっとも欠かせない存在と感じるのがジャック・コーネルセンだ。195センチ、110キロの均整のとれた身体に走力と器用さ、優れたゲームセンスを兼ね備え、LOからバックローまでの複数ポジションを高い次元でカバーする。ジェイミー・ジョセフヘッドコーチがテストマッチでスターティングラインアップを決める際、真っ先にメンバー表に書き入れるのはこのオーストラリア出身の28歳の名ではないかと勝手に想像している。

 ワーナー・ディアンズほど高くはなく、テビタ・タタフのような問答無用の破壊力を有するわけでもない。それでも200センチ級のジャンパーが屹立するラインアウトで堂々と渡り合い、鋭い読みと巧みなコースどりで着実にゲインを刻む。飛び抜けて目を引くわけではないけれど、この人が入るとチームがうまく回る。そんな選手だ。

 2021年6月26日のブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズ戦の後半21分に入替で出場し、初キャップを獲得。以来、先のオールブラックス戦までのテストマッチ11試合のうち、本年6月の対ウルグアイ第1戦を除く10試合に出場した。初めてスターターに起用された昨秋のオーストラリア戦以降はすべて先発でフル出場(8テスト/オーストラリアAとの3連戦を含めれば実に11試合!)していることからも、首脳陣の信頼の厚さがうかがえる。

 コーネルセンのプレーを見ていて感心させられるのは、そのクレバーさだ。激しいコリジョンが連続するハイスピードの展開の中で正確に状況を見極め、チームの戦術戦略に沿って的確にプレーを判断、遂行する。FWの核として骨惜しみせず体を張る一方、むやみに正面突破を図って球を失うような愚はおかさない。ひとつのキャッチ、ひとつのパス、ひとつのサポートにまで、フォアザチームの思考と配慮が行き届いている。

 体格差を超越するプレーヤーの例をもうひとつ。過日、三菱重工相模原ダイナボアーズのジャクソン・ヘモポにインタビューした際、こんなエピソードを聞いた。

 アグレッシブなLOとしてニュージーランドのパーマストンノースボーイズ高校で頭角を表し、オタゴ代表、ハイランダーズとキャリアを重ねた愛称“ジャックス”は、2018年6月のフランス戦で24歳にしてオールブラックスデビューを果たした。同年11月には、東京で行われた日本代表戦にも出場している。

 しかし2019年のW杯日本大会でのスコッド入りは惜しくも叶わず、ほどなくしてダイナボアーズへの移籍を決断。可能性を秘めた若きオールブラックの日本行きは、現地でも小さくはないニュースとして報道された。

2018年、日本代表とも対戦。キャップ5で、唯一の先発がこのゲーム(Photo/Getty Images)

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