女子 2022.09.13

NZ女子ラグビー国内選手権 レジェンドの大活躍で2年ぶりにカンタベリーが優勝

[ 松尾智規 ]
NZ女子ラグビー国内選手権 レジェンドの大活躍で2年ぶりにカンタベリーが優勝
カンタベリーを再び国内チャンピオンに導き、優勝カップにキスをするコックセッジ(Photo: Getty Images)


 ニュージーランド(以下、NZ)の女子ラグビー国内選手権『ファラ・パーマー カップ』のプレミアシップ決勝が9月10日、クライストチャーチのラグビーパークでおこなわれ、カンタベリーがオークランドを41-14の大差で破り2年ぶりに王者に輝いた。

 レギュラーシーズンを負けなしの1位で通過したカンタベリーは、準決勝でウエリントンを相手に31-3の圧勝で決勝へ。もうひとつの準決勝は、昨年の覇者ワイカトに26-21と僅差で勝利したオークランドが勝ち上がり、決勝はカンタベリー対オークランドの因縁のライバル対決となった。

小春日和の最高のコンディションの中、先にオークランドが入場。続いてホームのカンタベリーの入場は、節目の試合となる3選手が最初にフィールドに入ってきた。

 まずは、100試合目を迎える34歳の大ベテランSHケンドラ・コックセッジ。続いて、50試合目となるPRピップ・ラヴ。そして、この決勝が引退試合となる37歳の大ベテラン、元ブラックファーンズ(女子NZ代表)で2010年のワールドカップ優勝メンバーでもあるPRステファニー・テ・オハエール・フォックスが続いて入場。地元カンタベリアンの観客に温かく迎えられた。

左からラヴ、コックセッジ、テ・オハエール・フォックス(撮影:松尾智規)

 試合は、開始5分ほどでカンタベリーが2連続トライを挙げ序盤からエンジン全開。しかしオークランドは、ブラックファーンズの背番号10のルアヘイ・デマントがトライを奪い返し、10-7の3点差に食らいつく。
 その後スコアはしばらく動かなかったが、前半終了間際にカンタベリーがPGで3点を追加。13-7とカンタベリーのリードでハーフタイムとなった。

▼後半、大爆発のカンタベリー

 前半は風下の影響もあり途中から苦戦していたカンタベリーだったが、後半に入り風上になると一気に攻撃を加速した。まずはPGで得点を重ね、スコア上で相手にプレッシャーをかけた。

 その後カンタベリーは、風をうまく利用したキックを使いながら、終始有利に進めていたFW戦を武器に、速い展開ラグビーで3トライを追加。後半はオークランドをまったく寄せ付けなかった。

 このまま終わるわけにはいかないオークランド。しかし、終了間際に1トライを返すのが精いっぱいだった。最終スコアは41-14とカンタベリーの圧勝。

 勝因をあげると、相手を圧倒したスクラムをはじめ、FW戦で有利に試合を進められたのが大きいか。それ以上に印象に残ったのが、チームの完成度の高さである。一人ひとりがしっかりと仕事をこなしているのが圧勝につながったと言えるだろう。

 過去6年で5回の優勝をしているカンタベリーの強さには驚かされた。

 試合後のプレゼンテーションでは、コックセッジ、テ・オハエール・フォックス、そしてラヴの3選手に花束が贈られ、チームメイトから“ハカ”で祝福される光景もあった。

カンタベリーでの最後の試合を終え、花束を手に感謝などを述べたコックセッジ(撮影:松尾智規)

▼100試合の節目、最後の国内選手権で見せたレジェンドの貫禄

 コックセッジは、今年のワールドカップ後に引退することを表明している。すなわち、この決勝がコックセッジにとって赤黒のジャージーを着てプレーする最後の試合だった。

 この決勝の一番のハイライトは、コックセッジのトライだろう。
 カンタベリーFWが相手ボールのスクラムでプレッシャーをかけたのがきっかけで、パスをインターセプトしたコックセッジ。相手WTBの追走を振り切り、約40メートルを走り切ってトライを決め、まさにスタジアムが一番盛り上がった瞬間だった。
 そのコックセッジは、トライのほかに2つのコンバージョン、4PGとゴールキックはすべて成功。合計21得点を稼ぎだす大活躍で自らの100試合目を祝った。
 66分(後半26分)にピッチを退くコックセッジに、観客からスタンディングオベーションが起き、拍手が鳴りやまなかったのが印象的だった。プレーだけでなく人柄の良さでも地元カンタベリアンに愛されているコックセッジは、まさに“レジェンド”の言葉がふさわしい。

 試合後、子どもだけでなく、大人からもサインや写真攻めにあったコックセッジがインタビューでこう語った。
「ラグビーパークで、仲間たちと最高のパフォーマンスで赤黒のジャージーを締めくくることができて、最高な気分です」

 2010年、2017年と2回のワールドカップ優勝を経験しているコックセッジ。来月から自国で開催されるワールドカップで再び頂点に立つ大きな仕事が残っている。

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