各国代表 2022.08.23

女子ニュージーランド代表がオーストラリア代表に圧勝も、指揮官は納得いかず。

[ 松尾智規 ]
女子ニュージーランド代表がオーストラリア代表に圧勝も、指揮官は納得いかず。
高い攻撃力を見せたブラックファーンズ。写真はWTBアイシャ・レティ-イイガ。(Getty Images)



 今年10月8日に開幕するラグビーワールドカップ(ニュージーランドで開催)に向けて、8月20日にニュージーランドのオレンジセオリー・スタジアム(クライストチャーチ)で女子ニュージーランド代表 “ブラックファーンズ”がオーストラリア女子代表 “ワラルーズ”とローリー・オライリー・カップをかけて対戦した。

 安定したセットピースと早い展開を武器にブラックファーンズが合計8トライの猛攻で52−5で圧勝。初戦に勝ったことで来週の勝敗に関わらず、ブラックファーンズがローリー・オライリー・カップを防衛する事になった。

【ブラックファーンズのHaka (Black Ferns Twitter)】

▼注目の「Haka」は大ベテランが初めての指揮

 通常ハカはマオリの選手が指揮をするが、この日は、地元カンタベリーでプレイする34歳の大ベテランのSHケンドラ・コックセッジの指揮だった。ワールドカップ後に引退をすると言われているコックセッジの初めてとは思えない気合の入った指揮は圧巻で観客を魅了した。

 コックセッジがインタビューでこう語る。
「地元クライストチャーチで指揮をできた事はとても特別なことで感動した」
プレイでは、抜群の状況判断と素早いボール捌きでBKに良いボールを提供した。更にはトライも挙げて勝利に貢献した。

 試合は、序盤ブラックファーンズが速いテンポで攻撃するもハンドリングエラーなどでリズムに乗れず。逆にワラルーズに攻め込まれることもあったが、固いディフェンスで得点を与えなかった。

 前半13分にブラックファーンズは、ラインアウトを起点にSOルアヘイ・デマントが中央に先制トライ。このトライを皮切りにブラックファーンズがトライの山を築くことになる。

 この日一番目立ったのがWTBアイシャ・レティ-イイガ。ボールを持つと必ずと言って良いほどゲインラインを越えてチャンスを作り出す。
 44分(後半4分)、センターライン付近でボールをもらったアイシャ・レティ-イイガはディフェンスのギャップをうまくつき50メートルを見事に走り切ってのトライは圧巻だった。
 フロントローような風格ながらもスピード抜群でフィジカルが強くディフェンスを蹴散らす姿は、女性版ジョナ・ロムーと言える。

【WTBアイシャ・レティ-イイガの豪快なトライ (Black Ferns Twitter)】

 その後もブラックファーンズの勢いは止まらず後半に入っても一方的な試合展開となる。
このまま52−0で試合が終わってしまうかと思われた。

 しかし、ワラルーズは、残り1分を切ったところで意地のトライを取って完封負けは逃れた。
 セットピース(スクラム、ラインアウト)の特にラインアウトに大きな課題を残したワラルーズは、ワールドカップに向けて立て直しができるか。

▼ブラックファーンズ圧勝も指揮官は、納得いかず。

 昨年末の北半球遠征でイングランド、フランスの両チームに2連敗ずつの4連敗で遠征を終了したブラックファーンズ。その後にチーム内の問題が発覚してヘッドコーチが辞任。
 今年に入り新たに指揮官として声がかかったのは、日本でもお馴染みのウェイン・スミスだった。

 ウェイン・スミスの初采配となる6 月のパシフィック フォー シリーズ(NZ、AUS、カナダ、アメリカ)で は4 試合すべてに勝利してタイトルを獲得した。
 しかし、まだまだ試運転の状態だったため、良い試合をしたとは言えないシリーズだった。

 今回のオーストラリアとのローリー・オライリー・カップの第2試合は、6月のシリーズからワンランク上を目指しての大事な試合と位置付けていた。
 初戦で結果を出し、良い調整ができていると言えるだろう。

 しかし指揮官は、47点差の圧勝でも序盤のハンドリングエラーなどでつまずいた事に対して「がっかりした」と厳しい意見だった。
 これは、昨年末の北半球遠征で差をつけられたイングランド、フランスの格上のチームを見ているからだ。

 一方で、セットピースの安定とディフェンスが良かったことは称賛した。次週の試合で、スキルレベルをワンランク上にもっていくことを選手たちに期待をしているようだ。

 ローリー・オライリー・カップの2戦目(8月27日)は、場所を敵地に変えてアデレードでおこなわれる。



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