海外 2022.05.31

「スタッド・ロシュレーのビッグファミリーの勝利」 初の欧州制覇にファンも歓喜

[ 福本美由紀 ]
「スタッド・ロシュレーのビッグファミリーの勝利」 初の欧州制覇にファンも歓喜
欧州チャンピオンズカップで優勝し、ファンと一緒に喜ぶラ・ロシェルの選手たち(Photo: Getty Images)


 ラ・ロシェルがヨーロッパでは無敵と思われていたレンスターを破って、初めてヨーロッパチャンピオンの座に輝いた(24-21)。昨季のファイナル初出場に続き、また新しいクラブの歴史を刻んだ。フランスのクラブでヨーロッパチャンピオンになったのは、トゥールーズ、ブリーヴ、トゥーロンに続いて4つ目である。

 「フランスの選手を研究するためにスタジアムに観戦しにきた」と言う、イングランド代表のエディー・ジョーンズHCは「LOウィル・スケルトンのパフォーマンスが圧巻だった。これまでよりも強くヒットしていた。彼を筆頭にラ・ロシェルのFWがレンスターのストラクチャーを崩した」と現地ラグビー紙『ミディ・オランピック』に話している。

 ラ・ロシェルのロナン・オガーラHCは「我々にはプランがある」と試合前に言っていた。選手はそのプランを最後まで遂行し、それまでどのチームにもできなかったレンスターのアタックを封じ込めることに成功したのだ。

 ラックでプレッシャーをかけ、ペナルティをとられはしたがレンスターのペースを崩し、速く上がるディフェンスでレンスターSOジョナサン・セクストンに余裕を与えず、PGの3点よりも力で勝負してトライをとることを選んだ。その結果、ラ・ロシェルは3トライ、一方レンスターを0トライに抑えた。

「ロナン(オガーラ)から言われていたのは、相手を見ていて1秒でも遅れればレンスターのペースになり、こちらのしたいことができなくなるから、どんどん自分たちにできること、つまり激しく上がって強くディフェンスし、アタックはボールをキープしてフェイズを重ねるように言われていた」とキャプテンのグレゴリー・アルドリットは言う。

 この試合、ラ・ロシェルはSHタウェラ・カーバーローとFLヴィクター・ヴィトの2人の主力を負傷で欠いていた。代わりに抜擢されたのは、SHトマ・ベルジョン(24歳)とFLマチアス・アダッド(21歳)。2人とも少しずつ試合には出ていたが、決勝という舞台で元オールブラックスのベテラン選手の代わりというのは荷が重いのではと多くのファンが不安を感じていた。しかし、それはまったくの杞憂だった。ベルジョンはFWとSOイハイア・ウェストに助けられながら、シンプル且つ正確にプレーし、また2019年U20チャンピオンのアダッドはタックルにモールにラックにと縦横無尽に活躍していた。

 また、終盤10分間レンスターの22メートル内でラ・ロシェルが攻め続け、倒れながらも腕を伸ばして逆転トライを決めたアルチュール・ルチエール(24歳)もこの日はSHの控えとして出場していたが、本来はWTB/FBの選手だった。

堅守のレンスターに対し、ラ・ロシェルはアグレッシブに攻め続けた(Photo: Getty Images)

 「今週、チームのみんなに『試合メンバーから外れた選手のことを思ってほしい。そして本当に欲しいものは何なのか? 本気で優勝したいと思っているのか、各自に問いかけてほしい』と話した。グループ内でレンスターに優勝カップを持ち帰らせたくないという気持ちが固まった」とアルドリットは明かす。

 「昨季、2つのファイナルで敗れ(チャンピオンズカップとトップ14、どちらもトゥールーズに敗れた)、今季開幕後も引きずっていた。トゥールーズが優勝カップを掲げるところを見た時の苦痛が今も消えない。2度とこの苦痛を味わいたくなかったから取り憑かれたように死に物狂いで戦った」と続ける。

 「誰も僕たちが勝つと思っていなかった。でも僕たちは60分まで持ち堪えれば、あとはこちらに有利になるとわかっていた。その通りになった! ラ・ロシェルの人に伝えたい、今回は優勝カップと一緒に帰るから準備しておいてください!」とアルドリットは地元で応援してくれたサポーターにメッセージを送った。

 ラ・ロシェルの街もすでに大騒ぎだった。イベントがおこなわれるときによく使われる旧港に集まり、自分たちのチームがヨーロッパのチャンピオンになったことを祝っていた。

 選手とスタッフがラ・ロシェルの空港に到着したのは翌朝の5時半だった。こんな時間だから誰もいないだろうと思っていたら、500人ほどのサポーターが出迎えにきていた。アルドリットと前キャプテンで2010年からクラブに在籍しているロマン・サジがサポーターの前で優勝カップを掲げる。サポーターから拍手と「メルシー! メルシー!」と言う声が湧き上がる。

 その10時間後、ラ・ロシェルの旧港でおこなわれた優勝パレードには1万を超える人が集まった(のちに3万5000人〜4万人と判明)。街全体が幸せなお祭りムードに包まれた。トップ14のホームでの試合は、現在67試合連続満員御礼記録を更新中(コロナ対策で無観客試合や観客数制限のあった時期を除く)、地域の人にどっぷり愛されているクラブなのだ。

 1991年から会長としてクラブを築き上げてきたヴァンサン・メルラン氏は、「スポーツでは、勝利に値するだけのことをしていても、必ずしも報われるとは限らない。でも今日は私たちの努力が報われたのです。選手はやるべきことをし、サポーターは彼らを後押ししてくれました。スタッド・ロシュレーのビッグファミリーの勝利です。これからも勝ち続けます。今ではそれが私たちのカルチャーになっているのです」と語った。

 一方、トップ14では今週末のアウェーでのリヨン戦がトップ14のリーグ戦最終試合となる。プレーオフ進出のためには勝ち続けなければならない。

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