「一流の仕事見て」。NTTコム東京ベイ浦安の山田章仁、ホストゲームへ小学生招待。
さすがの行動力だ。
「どんどんやっていかないと。すぐ1、2年と時間が経っちゃうし」
2015年のラグビーワールドカップ・イングランド大会で日本代表だった山田章仁は、来年1月に初年度を迎えるジャパンラグビーリーグワンで子どもたちへの招待席を設ける。
名付けて「GLOCAL SEAT」。所属するNTTコミュニケーションズ シャイニングアークス東京ベイ浦安のホストゲーム計8試合で10席ずつを用意。小学生と18歳以上の保護者5組10名を招待する。
観戦エリアは、取り組みを快諾したチーム側へ「割とグラウンドに近い方」の指定席をリクエスト中。今月23日から31日までの間、希望者を募る(https://yamada-seat.paperform.co)。
各国代表選手の集まるリーグの公式戦を通し、得難き体験を提供したい。
「ラグビー、スポーツをやっている子なら、プレーを生で観てもらってそれを(成長への)物差しにしてもらっても。スポーツをしていない子でも、世界一流の仕事を見て次の日から勉強を頑張るとか、英語でコミュニケーションを取る選手を見て『英語をしゃべるって大事なんだな』と気づくとか…。彼らの人生をドライブするきっかけになってくれたら本望ですね」
小倉高、慶大を経てプロ選手となったのは2008年春。ホンダから三洋電機(2011年度よりパナソニック)に移籍して3季目の2012年には、社会人アメリカンフットボールXリーグとの二刀流にも挑んだ。
NTTコム入りした2019年以降も、フランスのトップ14、アメリカのメジャーリーグラグビーと各国リーグのクラブへ期限付きで移籍。グラウンド内外で異文化に触れており、「海外では積極的にスポーツを通しての地域貢献もやっていた。僕は常々、経験を活かさないと意味ないなぁと思っている」。社会情勢が一時よりも落ち着いたのを踏まえ、数年前からあった「GLOCAL SEAT」の構想を実行に移したのだ。
さかのぼって2020年、世界中でパンデミックが発生した。日本で自宅生活を余儀なくされた山田はオンラインでトークイベント、就活セミナーなどを実施していた。特に、一流選手を招いてワールドカップ日本大会の試合を振り返る催しは大盛況で終えた。
「有料にもかかわらず皆さんが参加してくださった。それをどこかで還元したいなと思っていたんですよね」
当時の収益の一部が、今度の「GLOCAL SEAT」の活動費となる。繰り返せば、この人は「経験を活かさないと意味ない」をモットーとする。
「もともとちびっこを招待したいなという思いは、僕に限らず他のラグビー選手もあると思うんです。今回のいいところは、オンラインイベントの収益で還元するということ。そこに参加した皆さんと一緒に招待している感じになるかなと」
今年8月まで渡米。リーグワン元年に向けて帰国すると、「チームのまとまりがいい」。2018年度以来の同部復帰となるロブ・ペニー ヘッドコーチのもと、一体感が生まれているという。
当の本人は現在コンディション調整中も、近く実戦復帰の予定だ。しなやかに相手をかわすWTBとして、新加入で元オーストラリア代表FBのイズラエル・フォラウらとシンフォニーを奏でるか。
「経験上、勝ちが重ならないと(チーム力は)活かしきれない。せっかくコーチ陣が一生懸命やってくれているので、シーズン序盤に白星を作っていきたいですね。試合でもインパクトを残せるように。トライにもこだわっていきたい。チームには外国人選手だけじゃなく、本郷泰司、松尾将太朗、安田卓平といい日本人選手も多いので、彼らと一緒にいいプレーができたらいいですね」
36歳で迎える新シーズン。自身にとっても貴重な時間としたい。