【ラグリパWest】苦悩を超えて。野中翔平 [花園近鉄ライナーズ新主将/フランカー]
2、3年目はリーグ戦に全試合先発する。183センチ、100キロの体を利したタックルと続くボール奪取を評価された。出られない、出る、という両方の気持ちを知り得たことはリーダーとしての幅の広さにつながる。
副将には3人を指名した。HO樫本敦、FLジェド・ブラウン、そしてオーストラリア代表110キャップを持つSHウィル・ゲニア。3人とも年上。学年でいけば樫本とゲニアは8つ、ジェドとは5つの差がある。
「今年の強化ポイントのひとつはスクラム。樫本さんはそこを分かっているし、主将経験者です。ジェドは人間性がいい。自分の技術を惜しみなく他人に伝えます。『その態度はよくない』ということも言える。ゲニアは世界最高の選手。勝つことを考えられます」
ブラウンとは同じポジション。自分が出られなくなる可能性より、チーム・ファーストで考える。困難は承知で、過程と結果の両立を求める。試合出場やそうでないに関わらず、部員の満足度を保ち、同時に勝利する。自分を含めた4人を軸にそれ実現させる。
全体を思いやるのは野中家の家風でもある。実家は建築資材を扱うケイロン産業。祖父の昇は創業者会長、父の尊(たかし)は社長だ。野中は三代目になる。
「働いてくれている人は100人くらいいるかと思います」
大阪・寝屋川の本社を含め西日本に10か所の支店などを持つ。年商は100億円だ。
「祖父には色々なことを教えてもらいました」
恩返しのため、昨年、プロになった。空き時間で家業を手伝う。それまでは近鉄グループホールディングスの総合職として、鉄道に勤務していた。100社以上のグループ会社を統べる社長になる可能性を返上し、まずラグビーに集中する。そして、家のことをやる。
チームは9月13日から4日間、和歌山・白浜で新チーム初の合宿を行った。初めて全選手が顔を合わせた。本格的な始動である。野中は目標を口にする。
「チームはディビジョン2なので、1年でディビジョン1に上げることです」
トップリーグから新装されたリーグワンでは二部に振り分けられている。
高校の栄光、大学の挫折。順番からいけば、社会人では栄光と再会するはずである。