【ラグリパWest】夏はスクラムの季節。岡田明久 [天理大FWコーチ]
夏休みが来ました。
昨年に比べたら、じっくりスクラムが組めるチームが多いのではありませんか。
「スクラムは数を組まなアカンねん。組み方ちゃうねん」
アキさんこと岡田明久さんの声は大きくなります。元プロップ。漆黒の天理のスクラムを大学屈指の強さにしました。昨年度、この国をリードしてきた早明に押し勝って、初の学生日本一の称号を手にします。
スクラムの重みは2年前の『ラグビーマガジン5月号』で話しています。
<スクラムで10センチ前進できれば、味方のバックスはスピードに乗った状態で、1メートル前で相手と対峙できます。スクラムは自分たちのプレーにおける決めごとが組み立てやすいだけでなく、相手ディフェンスの立ち方、配置も設定できます>
押された方はより消耗しますしね。密着プレーなので、モールにもその効果は波及します。スクラムは試合の行方に大きく影響します。その強化をアキさんは「組むしかない」と言い切ります。
「数を組んだら自然に形ができてくる。数を組まんスクラムはすぐ壊れるやろな。料理人は魚を焼く時、夏は塩を多めに振りかけるやろ。それと一緒や。何回もやっているうちにどうしていいかが分かってくるんや」
経験を積んだ料理人は、夏は汗をかくことを計算して、薄味にならないよう塩を多めに使う。スクラムも一緒、と説きます。組む回数を重ねていけば、スクラムにおける強い形、「低く、固まる」が自然にできてきます。
「ワールドカップの時、日本がスクラムを押し込んだように見えたわなあ。あれは、日本はなんにもしてない。低く、固まっただけや。外国人は押せんもんやから、焦って個々に行った。自分らで崩れて墓穴を掘ったんや」
組み込めば足首も柔らかくなります。可動域が広がれば、地面と平行に低くなれる。相手に対応しやすくなります。
「俺らが現役の頃は、フロントローはくるぶしをカバーするハーフカットのスパイクを履いていた。今はそんなん見んやろ」
椅子とテーブルの生活。畳で正座はめったになくなりました。
8人の共闘を大前提に、前列中央のフッカーの重要性も語ります。例を引くのは最後のトップリーグで初4強入りしたクボタ。南アフリカ代表のマルコム・マークスがいます。
「フッカーは後ろがおらんやろ。ロックの押しがないから1対1なんや。せやから、そこが強いと相手の芯が抜ける。腑抜けになる。クボタの両プロップはマルコムについて行くだけでええんや。ただ、彼が抜けたらクボタのスクラムは変わるやろな」
さて、そのスクラム練習はどれくらいの時間をかければよいのか。
「社会人のフロントローは強い奴を3人集めとる。だから短くてもええ。でも大学なんかは違う。時間をかけんといかんわな」