コラム 2021.07.19

【ラグリパWest】空白の時間も関係なし。秦隆太[同志社大LO]

[ 鎮 勝也 ]
【ラグリパWest】空白の時間も関係なし。秦隆太[同志社大LO]
大阪桐蔭の高校時代はラグビー部への入部がかなわず、同志社大に入ってから再開をした秦隆太さん。3年生LOとして二軍のBチームまで上がってきた



 高校は大阪桐蔭。とはいえ、名に聞こえたラグビー部ではない。もうひとつの顔、進学校の側(がわ)にいる生徒だった。

 そのハンディを秦隆太(はた・りゅうた)はものともしない。同志社の3年生LOは、今秋のリーグ戦出場が見え隠れする。チームは関西春季大会を6回目で初制覇した。

「Aチームが勝ったのはうれしかったです。僕たちBを相手に練習しますから。Bが強いとAも強くなります」

 この春、秦は二軍のBチームまで上がった。上のAチームとともに天理に連勝する。7月4日、春季大会決勝で35−19。その前日、Bは31−21として、その先ぶれとなった。
「ジュニア(B)が天理に勝ったのも入学してから見たことがありません」
 185センチ、100キロの体は日焼けに輝く。セットすれば獲物を狙うイグアナの目になる。

 谷口順一はこの後輩を最高にほめる。
「同志社の中で、この2年間で一番伸びた選手だと思っています」
 同志社ラグビークラブ(OB会)の運営を担う副理事長として、この春、レベルを問わずすべての試合を見た。谷口は在学中の1991年、FLとして日本代表に選出されている。

 2年前の4月、秦は入部テストを受ける。内容はベンチブレス、スクワット、1キロ走や面接。「就職が有利になる」という安易な入部希望者をふるい落とすため、40年近く前からこの試験は続いている。

 酒井優(まさる)は秦のことを振り返る。
「最初、ベンチが60キロ上がらなかったはずです。まあ、そういうトレーニングをやったことがないので、仕方ありませんがね」
 酒井は主に育成担当のOBコーチである。

「ただね、コンタクト練習なんかで、すぐに起き上がって、何回も行くんですよ」
 秦はリロードスピードについて語る。
「それはスキルではありません。気持ちがあればできる。そこは意識しています」
 酒井は同期で同じくコーチだった萩原要との会話を覚えている。
「秦が同志社を救う日がくるかもしれない」
 萩原はクボタに進みHOとして活躍した。

 秦は1年夏にベンチを入部目標の90キロに到達させる。
「当たり方やハンドリングは満足いくまでやりました。30分とか、1時間とか。佐藤さんや萩井さんに教えてもらいました」
 新人時の監督は萩井好次。フルタイムのコーチは今年3年目に入った佐藤貴志。2人は親身だった。

 大阪桐蔭には中学から通った。秦の実家は兵庫の尼崎である。最寄り駅からJR一本、45分ほどで大東にある学校に着く。中2の時、友達に誘われラグビー部に入った。
「チームは最弱だったと思います」
 地区は北河内。東海大仰星を中心に強豪がひしめいていた。

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