コラム 2021.07.19
【ラグリパWest】空白の時間も関係なし。秦隆太[同志社大LO]

【ラグリパWest】空白の時間も関係なし。秦隆太[同志社大LO]

[ 鎮 勝也 ]



 高校ではラグビー部に「入られなかった」。秦のコースは中高一貫。競技はⅢ類と呼ばれる体育・芸術コースでしか認められていない。野球部や吹奏楽部など11の強化クラブの部員はみなこのⅢ類に在籍する。

 Ⅰ類は京大を中心とする最難関、Ⅱ類は国公立大を目指す。この1988年に創立された私立共学校は文武を別にする。ラグビー部は98回全国大会(2018年度)で桐蔭学園を26−24で破り、初優勝。野球部は春夏甲子園優勝8回を記録する。大学進学は2020年、東大に8人、京大に33人を送り込んでいる。

 秦は机に向かう青春を送る。高校では帰宅部。ラグビー部監督である綾部正史やコーチの山本健太による保健・体育の授業は受けた。けれど、距離は遠かった。その状況でも楕円球への渇望がふつふつと湧き上がる。

「高2の時、1こ上が全国大会で準優勝しました。やりたい、と思うようになりました。勉強がしんどかったのもあったと思います」

 全国頂点直前の97回大会では、決勝で東海大仰星に20−27で敗れた。ひとつ上の主将はFLの上山黎哉。同級生の優勝主将はCTBの松山千大(ちひろ)だった。
「全く面識はありません。Ⅲ類の人たちとは校舎も違いましたから」
 2人は帝京に進んでいる。

 同志社には指定校推薦で入った。理工学部で専門は電子工学である。
「半導体を使った勉強をしています」
 来年は最上級生になる。
「社会人から誘ってもらえたら嬉しいですけど、まだまだ未熟です。自分が出られているのもケガをしている人たちがいるからです」
 謙虚さがある。満足はない。

 個人的な目標を口にする。
「ミツキさんのように刺さるタックルができるロックになりたいです」
 南光希の名前が挙がる。182センチ、102キロの共同主将は肉弾戦の中心にいる。

 チームの目指すところは決まっている。
「日本一です」
 同志社の最後の選手権優勝は1984年度。19回大会からの3連覇だった。そこから40年ほどの時が経つ。

 天理は前年度の選手権覇者。加えて関西リーグ5連覇中。その漆黒軍団に上の2チームがともに勝ったことは、紺グレ復活を予感させる。今や秦の突き上げは、経験者たちの競争心をあおり、チーム全体の底上げのため、なくてはならないものになっている。

PICK UP