海外 2021.04.29
欧州4強激突へ… 英国型変異ウイルスの影響受けるボルドー、トゥールーズはけが人続出。

欧州4強激突へ… 英国型変異ウイルスの影響受けるボルドー、トゥールーズはけが人続出。

[ 福本美由紀 ]
トゥールーズのヨアン・ユジェ。今季限りでの引退を表明していたが負傷離脱となった(Photo: Getty Images)

 一方、ボルドーと対戦するトゥールーズは、チャンピオンズカップ準々決勝の翌週、国内リーグで代表選手を休ませながらもカストルに勝利。その2日後に相手リザーブのフロントローの選手が感染したという知らせに、すぐにビデオで試合をチェック、当該選手と接触した選手2名を隔離し、FWはマスク着用でコンタクトなしの練習に切り替えた。
「チャンピオンズカップ準決勝でコロナのために不戦敗はあまりにも酷。リスクゼロはあり得ないが、予防するためにできることは全てする」とディフェンスコーチのロラン・チュエリー。幸い、隔離された選手もその後の2度の検査で2度とも陰性となり、通常に練習を再開、週末にはラシン92をホームに迎えて対戦した。

 しかし、トゥールーズはこの試合でチームの主力のWTBヨアン・ユジェを失ってしまう。ユジェがグラウンドに横たわっている間、ユース時代からのチームメイトのFBマキシム・メダールがずっと寄り添っていた。トゥールーズのユーゴ・モラHCだけでなく、ラシン92のロラン・トラヴェールHCまで駆け寄った。誰にでも大きなけがだとわかったし、昨年11月に今季で引退することを発表している彼のキャリアの最後になるかもしれないと、グラウンドには重い空気が張り詰めた。
 トゥールーズは後半に2トライ追加、ボーナスポイントを獲得して勝利したが、チームに笑顔はなかった。試合後のインタビューでSOロマン・ンタマックは「ヨアンのけがでみんなが動揺して、変な空気になった。試合に入り直すまでに時間がかかった」と話した。

 ユジェはフランス代表62キャップ。初キャップは2010年アルゼンチン戦。2011年ワールドカップNZ大会はスコッドに入っていたが、アンチ・ドーピング競技会外検査の居場所情報義務違反で直前に資格停止に。満を持して臨んだ2015年イングランド大会は初戦のイタリア戦で膝靭帯断裂。3度目の正直になる2019年日本大会では、練習後は毎日銭湯に通い、サウナと冷水浴のリカバリーを怠らず、オフの日も1人ウェイトルームでトレーニングを欠かさず、徹底してコンディションを整えていた。
 トライ後の敬礼ポーズや投げキッスのセレブレーション、惜しみない運動量で神出鬼没。猛烈なタックル、またWTBなのに果敢にラックに突っ込んで行き、時には敵を挑発し、味方がトライをすればどんなに遠くからでも一番に駆けつけて最高の笑顔で祝福。グラウンドの外ではチームメイトやスタッフをイジって場を和ませるムードメイカーだ。

 試合の2日後、アキレス腱断裂と診断されすぐに手術。手術後、本人のインスタグラムに、「手術は成功、これから新しい人生が始まる。僕より先に体がストップ! と訴えた。奇跡もサプライズもない。C’est la vie(セラヴィ=これが人生)。僕はラグビーに全てを捧げたし、ラグビーからはその10倍ものことを与えてもらった」とのメッセージが投稿された。

 3月27日に膝靭帯断裂でシーズンを終了したチームメイトのCTBソフィアンヌ・ギトゥーンヌも、インスタグラムで自身のけがの報告をする時に『#c’est la vie』と記している。フランス人が何かをあきらめなければいけない時に「仕方がない」と自分を納得させるためによく使う表現だが、寂しく響く。
 ギトゥーンヌもトゥールーズのアタックを前に進めるモーターのような存在で、彼の不在は大きな損失になっている。
 トゥールーズに限らず、今年は大きなけがが例年より多い。モラHCも「(代表の試合が1週間ずれるなど)あらゆる面でコロナの影響をすでに受けているが、ウイルスが選手の身体に与える影響は、まだはっきりとはわかっていない。感染した選手の回復後のフィジカルの状態を見ていると、安心できない兆候が見られる」と不安を漏らしている。

 FBメダールもこのラシン92戦で膝を痛めて今週月曜日の練習には参加していない。もう1人のFBトマ・ラモスも、ふくらはぎの負傷が完治しておらず、ランニングを再開したばかり。WTBチェズリン・コルビも足首のけがを抱えながらプレーしており、盤石なようだが、トゥールーズも実はギリギリのところで戦っている。

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