国内 2021.04.02

ジャッカルで5連勝のサントリー・小澤直輝、クボタとの全勝対決でも「役割」果たす。

[ 向 風見也 ]
ジャッカルで5連勝のサントリー・小澤直輝、クボタとの全勝対決でも「役割」果たす。
トヨタ戦で劇的幕切れを演出した小澤(手前)。バレットの決勝PGが決まり歓喜(撮影:矢野寿明)


 紺のスーツを大胸筋で隆起させ、運転席に座っていた。

 小澤直輝はちょうど、東京は府中市内でラグビー部の練習を終えたばかりだった。まもなく社業で都心部へ出る。

「首都圏の酒屋さんを担当しています。酒屋さんが卸している飲食店さんも担当になります。担当を持って責任を持たせてもらえているのは、ありがたいです」

 国内トップリーグで開幕5連勝中のサントリーにあって、いま、32歳の社員選手が躍動している。

 各クラブが大型の外国人選手を揃えるバックローことFW第3列に入り、身長182センチ、体重102キロの身体を接点へ低く差し込む。自ら球を持てば前に出て、相手の球に絡めば向こうのテンポを鈍らせる。

「その試合での役割をある程度、理解して、チームに何で貢献できるかを、試合ごとに多少は考えていて。例えばボールキャリーで(突破役として)頑張らなきゃいけない試合もあれば、ブレイクダウン(接点での攻防)で頑張らなきゃいけない試合もある。そういう、自分の役割どころが明確になっているのかなと」

 同僚でSHの流大は、4歳上の小澤について「フーパーとそん色ないプレーを余裕で、しています」。ワールドカップ日本大会で8強入りした日本代表でもあるクラブの前主将は、トヨタ自動車の擁するオーストラリア代表主将のマイケル・フーパーを引き合いに出し、こううなずく。小澤とフーパーは体格と持ち味が似る。

 流はこうも補足した。

「(サントリーの)日本人のバックローは本当にレベルが高い。西川(征克)さん、桶谷(宗汰)もけがから復活して練習でも調子いい。飯野(晃司)もいます。そしてルーキーも入ってきて…。皆、いい選手なのですが、試合に出た小澤さんが必ず結果を残す。それで、定着している」

 優勝5回の強豪における定位置争いへ、小澤自身も「週の途中でゲームメンバーとノンゲームメンバーが決まり、ノンゲームメンバーが次の相手を想定してプレー。普通にゲームメンバーがトライを取られたり、アタックで全くゲイン(突破)できなかったりもする」。継続的な活躍が求められるなか、劇的なシーンを演出する。

 3月27日、愛知・パロマ瑞穂ラグビー場。話題のフーパーのいるトヨタ自動車戦に、後半20分から登場する。36-36と同点で迎えた後半ロスタイム。敵陣10メートル線付近で防御ラインに入る。

「トヨタ自動車さんがボールを持っているシチュエーション。得点するにはどうしてもボールを取り返さなければいけないという考えは頭にありました」

 どちらも反則を犯しづらい状況に映るが、小澤は「敵陣。こちらがペナルティをしても、向こうは(決まれば3点の)ショットという選択はしてこないだろう」と構える。落ち着いている。

 むしろ、相手の接点の位置がグラウンドの端側からやや中央へ移ってきたことで、ひとつのシナリオを思い浮かべた。

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