コラム 2021.04.02

【ラグリパWest】指導力で貢献する。一澤慎之助 [同志社大学生コーチ]

[ 鎮 勝也 ]
【ラグリパWest】指導力で貢献する。一澤慎之助 [同志社大学生コーチ]
同志社大ラグビー部復活のため、学生コーチとして貢献する一澤慎之助さん。日々練習をする京田辺のグラウンドは、新年度に合わせて人工芝を敷き直した。緑鮮やかな右手、部室の前には満開の桜が見える

「ああ、彼はいいですよね」
 大人たちの評価はみな同じ。高い。

 中尾晃、伊藤紀晶、酒井優…。
 同志社ラグビーでの役職はそれぞれ、副部長、ヘッドコーチ、コーチである。OB首脳の期待を集めるのは一澤慎之助。唯一の学生コーチはこの春、4年生になる。

 監督待遇の伊藤は話す。
「一澤は佐藤の一言を広げていける。選手が理解しやすいように補足できます」
 佐藤貴志はただひとりのフルタイムコーチ。毎日の練習を組み立てている。

 一澤はパイプ役を心がける。
「コーチのみなさんは社会人なので、学生がしゃべりにくいことがないようにしていきたい、と考えています」

 その指導は的確だ。ラックで相手をはがす練習では、形態を交え、短い言葉を使う。
「脇を締める」
 つけ根が甘いと下から手が出ず、相手を排除する力に結びつかない。

「選手には改善点を話します。フィードバックは丁寧にして、何が悪いかを示す。けなさないようにしています」

 その学びは佐藤から。
「知識量はすごいし、自信を持って話される。部員への影響も大きいです」
 OBでもある佐藤は現役時代、SHとしてヤマハ発動機と神戸製鋼に在籍した。日本代表キャップは4を持つ。

 佐藤のコーチ資格は最上のS。一澤はその入り口である「スタート」。間には上からABCと3つの等級が挟まっている。

 一澤は入学時、SHだった。2年に進級直前、選手からの転向を打診される。当時、監督だった萩井好次や佐藤からだった。
「真面目な部分が評価されたようです」
 自分の中では10分前集合が当然。スポーツ健康科学部に学ぶが、要卒単位はゼミと卒論をのぞき、ほぼ取得済みだ。

 最初は首をタテに振れなかった。
「情けなかった。選手としては実力不足、と言われているのと同じことだと思いました。やりたくなかったです」

 萩井や佐藤は言い続ける。
「チームというのは、選手だけじゃない。スタッフが裏で支えている。だから、選手は思い切ってプレーができるんだ」
 半年して、迷いは消えた。

 今はよかったと思っている。
「選手なら、自分のグレードだけ。でも、コーチならAチームを含めて、すべてのチームを見られて、貢献できます」
 本当の意味で紺グレの一員になる。

PICK UP