各国代表 2021.03.25

「アンビリーバ・ブルー!」 フランス代表、優勝かけスコットランドと対戦。

[ 福本美由紀 ]
「アンビリーバ・ブルー!」 フランス代表、優勝かけスコットランドと対戦。
ウェールズ戦の終了間際、ブリス・デュラン(15番)の逆転トライで死闘を制したフランス(Photo: Getty Images)


「英雄!」「熱狂」「歓喜」「勇敢」「途轍もない!」「アンビリーバ・ブルー!」……。
 ウェールズ戦後、記事の見出しを飾った言葉の数々だ。「息もできない終盤」と言ったのは、ロクサナ・マラシネアヌ スポーツ担当大臣。「やっとこちら側に転んだ!」とつぶやいたのは、元フランス代表FLヤニック・ニャンガ。

 そうなのだ。ファンはこれまでフランス代表チームが最後に逆転されて負けるところを何度も見てきた。レッドカードを出されて、そのまま形勢を立て直せず負けてしまう試合も見てきた。しかし平均年齢25歳、平均キャップ数21のこのブルーたちは、これまでの呪縛から自らを解き放ち、落ち着いて11フェーズをつなぎ、81分にトライをとり、ウェールズに逆転勝利。しかもボーナスポイントを獲得して、優勝への望みをつないだ。

 キャプテンのFLシャルル・オリヴォンは試合前、「グラウンドに入ったら、あの赤いヤツらから、何かもらえるなんて思うな。自分たちで勝ち取りにいかなきゃ何も得られない。最後の15分、とてつもなくきつくなる。その一番キツイ時に勝ちを獲りに行く。この試合は俺らのものだ!」とチームを鼓舞した。

 まさに、その通りになった。

 ファビアン・ガルティエが代表チームのヘッドコーチになって以来、控え選手のことを「フィニッシャー」と呼び、スターターと同じぐらい重要な役割を背負っていると主張してきた。しかしこれまでフィニッシャーの出番は少なかった。イングランド戦では後半、先発選手の運動量が落ちていたのに、ベンチに3人の選手を残したまま試合を終え、批判を受けた。だが、ウェールズ戦では、負傷やレッドカードの影響もあったが、フィニッシャーが見事に試合をフィニッシュした。

 近年目覚ましい成長を見せてきたHOカミーユ・シャだが、負傷もあり、今年のシックスネーションズでは2試合で20分プレーしただけだった。ウェールズ戦70分の時点で、「あと10分になり、とても(グラウンドに)入りたかった。『僕たちがインテンシティーを最大限にあげて、ボールを生かそう』とSHバティスト・スランと話していた。ウェールズを息切れさせなければならなかったが、それがしっかりできた」。

 実際にフィールドに出ると、解き放たれた野獣のように激しくパワフルなプレーで味方を前進させた。「いいグループができている。たとえ10分しか与えられなくても、このチームに貢献したい」と語る。

 CTBガエル・フィクーは、「勝てない年が続いて難しい時期だったが、今、また勝てるようになって、今週末、優勝を狙えるところまでこれた。若い選手でさえ、我々が10年以上優勝していないことは知っているし、優勝することがどんなにすごいことなのかもわかっている。サポーターや家族、みんなが待ち望んできたことだけど、まず勝つことに集中しなきゃいけない。2位がかかったスコットランドも強いモチベーションで臨んでくる。ただ勝つだけでも厳しい試合になる」。

 トップ14(国内リーグ)との規定で、昨秋のオータム・ネーションズカップの決勝戦に出場することができなかった主力メンバーにとっては、初めての決勝戦になる。2013年に代表デビューして以来、チームの歩んできた歴史を知っているフィクーだからこそ、このチームの進化を実感できる。

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