地上戦の星。フーパー、日本デビュー間近に控え「ユニークな環境が楽しみ」
その顔には、小さな切り傷の跡のようなものがたくさんついているように映る。
オーストラリア代表105キャップ(代表戦出場数)のマイケル・フーパーは、2メートル超の選手がひしめく国際ラグビー界において身長182センチ、体重101キロというやや小柄な身体を投げ出してきた。
激しくぶつかり合うオープンサイドFLのポジションに入り、低い姿勢でのタックル、ジャッカルを連発。観る者に勇気を与える。
大きくないことがかえって強みなのだと、笑う。
「ラグビーは体格に関係なく全員ができるもの。だからこそグレートなんです。大きなフロントロー、アスレチックなBKがいるなか、自分も独特な体格だと思っていて、フィットして、長くプレーできるのが強みです。私がしているFLは、攻守両面でインパクトを与えられるポジションです。特定の身体の大きさにとらわれないポジションでもあると考える。FLは、自由に解釈できるポジションです」
日本のファンが幸福なのは、当面、このフーパーを自国で観られることだ。オーストラリア代表、母国の拠点たるワラターズで主将も任されてきたフーパーは、今季からトヨタ自動車へ加わる。契約は1年。経緯はこうだ。
「自分のキャリアで(日本でプレーする)チャンスがあった時、トヨタ自動車が一番、最初にコンタクトして興味を示してくれたんです。もともとサイモン・クロン ヘッドコーチ(ワラターズで指導歴あり)との関係性もあり、スティーブ・ハンセン(ディレクター・オブ・ラグビー、前ニュージーランド代表ヘッドコーチ)、キアラン・リード(同代表127キャップ)といった敵としてプレーしていた人たち、茂野(海人共同主将)や姫野(和樹前主将、現ハイランダーズ)が作ろうとしているものに惹かれてトヨタへ来ることになりました」
2月20日、愛知のパロマ瑞穂ラグビー場。トップリーグ2021の開幕節で背番号20をつける。
トップリーグには外国人枠がある。他国代表歴のある選手の同時出場は最大2名までだ。共同主将のリードがNO8、南アフリカ代表61キャップのウィリー・ルルーがFBで先発するため、フーパーはベンチスタートとなる。
己の立場を理解する。
「どのチームにもいい日本人、外国人がいる。チーム内でのバランスがチャレンジすべき点になります。トヨタ自動車でもスタッフ、コーチ陣がいいコンビネーション、どうすれば80分間を通して効果的なプレーができるか、けがやイエローカードに対応できるかを考える。ユニークな環境でプレーできるのを楽しみにしています」
対する東芝では日本代表68キャップで同代表主将のリーチ マイケル、ニュージーランド代表25キャップのマット・トッドがFLで先発する。2019年のワールドカップ日本大会でもプレーした名手同士の肉弾戦は、チケットの価値を高めるだろう。
「ファーストラウンドはタフなゲームになると予想されます」
いくつもの傷は、「タフなゲーム」を前向きに乗り越えてきた証だ。