コラム 2021.01.26

【ラグリパWest】強豪に変わるあしおと。 和歌山工業高校 [和歌山県] 

[ 鎮 勝也 ]
【ラグリパWest】強豪に変わるあしおと。 和歌山工業高校 [和歌山県] 
44万キロを走った和歌山工ラグビー部所有の大型バスの前で記念撮影。山下弘晃顧問、岡本尚也部長、栗田優星主将、橋脇正典監督(左から)。バスの中からも部員たちも参加。


 監督になった橋脇正典は声を荒げた。
「どうしてもっと自信を持ってプレーしないんや!」

 指揮を執る和歌山工は90−0と圧勝する。
 1月16日、新人戦(近畿大会県予選)の初戦だった。

 合同チームに前半で43−0。なのに、OB監督に残ったのはもどかしさだった。
「新チームになって練習をさぼったことがあるんか? ずっとまじめに来てたやろ」
 部員はサイズがあるのに、消極的なプレーに終始。ハーフで交替させた。

 その訓育は熱い。
 橋脇は日本協会で最上のA級レフリーでもあるが、常の冷静さはない。6月25日には不惑になる。新年を境に8学年下で現部長の岡本尚也と立場を入れ替えていた。

 高校時代は連続して花園の土を踏む。
 高3時にはWTBとして79回大会(1999年度)に出場した。初戦で法政二に0−74の記録が残る。

 卒業後は大体大に進む。
「指導者になりたかったのです」
 同ポジションの1年上には久住辰也がいた。トヨタ自動車で日本代表キャップ3。選び抜かれるアスリートが間近にいた。

 保健・体育教員になり、県南の田辺では11年を過ごす。「ワコー」に戻って、この4月から3年目。岡本は話す。
「7キロのアップダウンのあるコースを走る時、橋脇先生は生徒より早いんです」
 部員たちに畏敬の念を抱かせる。

 橋脇が目指すのは監督とレフリーの両立だ。
「チャレンジしたいんです」
 日本協会のレフリー部門長である原田隆司には言われた。
「難しいで」

 それでも、ひるまない。
「大学同期の東、大向はチャレンジしています。それがエネルギーになります」
 東(ひがし)順一は大阪の公立中の教頭。大向将也(まさや)は石見智翠館から帝京と高校から大学に指導の場を変えている。

 この県立実業校の創部は1947年(昭和22)。学校創立の33年後である。
 花園出場は県首位の24回。熊野の13回を引き離す。県勢の出場回数が少ないのは、紀和代表として主に天理と決定戦をしなければならなかったためである。常設枠は65回大会(1985年度)にできる。

 全国大会では2回戦進出が最高。4回あるうち、近々では95回だ。魚津工を30−5で降し、優勝する東海大仰星に0−93と大敗した。
 主な現役のOBはHondaのFLである 服部航介。父・公彦もOBであり、コーチとして橋脇を補佐している。

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