フランスラグビー徒然。Janvier(1月) コロナ禍で「FREXIT」の声も
【シックスネーションズ】
フランス政府の判断は1月24日に。
同じくドーバー海峡をまたいでおこなわれるシックスネーションズ(ヨーロッパ6か国対抗戦)の開催に対しても、フランス政府は慎重な姿勢を見せていた。ロクサナ・マラシネアヌ スポーツ担当大臣は、「(アウェーでおこなわれる)アイルランド、イングランドとの対戦に関しては、フランスで適用されている感染症対策実施要領と同等の厳しい対策が、対戦する国々でも本当に実施されているという確証が必要。選手の健康がかかっている。ヨーロピアンカップでフランスに変異種が持ち込まれた。こういう事があってはいけない」と、フランスラグビー協会にシックスネーションズで適用される感染症対策実施要領を他の参加国と作成して、提出するように求めた。
「フランスでは、各競技団体が感染症対策実施要領を政府に提出し、保健省の認可を得ている。それだけの時間、労力、お金をかけて感染症対策に取り組んでいる。国際試合の場合もこの水準で他国の代表チームを受け入れるのだから、対戦国にも同等の対応でフランス代表チームが受け入れられることを期待する」と説明した。
1月18日、シックスネーションズの対策実施要領がスポーツ担当大臣に提出され、現在、保健省の認可待ちである。「入念に作られた実施要領が提出された」と大臣は報告し、「大会実施にあたって、この要領がしっかりと適用されることを参加国政府に約束してもらいたい。大会は2か月続く。その間に、チームと外部を遮断する『バブル』から選手は出たり入ったりすることになる。それぞれの国の予防対策も、これに見合ったものになっていなければならない」と付け加えた。
すでに、開幕戦となるイタリア戦の準備合宿のメンバーは発表されている。LNRとの話し合いの結果、今回は37名の選考可能な選手と、5名のトレーニングパートナーを招集できることになった。
「チームとして一緒に経験を積むことが重要」と繰り返してきたガルチエ ヘッドコーチ。今回もブレることなく今までの主要メンバーがリストに名前を連ねている。ただ、SOのロマン・ンタマックは12月27日のボルドー戦での対戦相手とのコンタクトで顎を二重骨折、手術を受け、復帰は2月末と見込まれている。
フランス代表合宿は1月24日から2月4日まで、昨年同様ニースでおこなわれ、メディアの取材はすべてオンラインでおこなわれると発表されている。パリ郊外の国立ラグビーセンターの方が、立地的に隔離されており安全ではという声もあるが、「パリのどんよりした天候よりも、ニースで南仏の太陽の下でトレーニングした方がリフレッシュできて、精神的に良いというのがガルチエ ヘッドコーチの意向」とフランスラグビー協会副会長のセルジュ・シモンは言う。
一方、女子とU20のシックスネーションズは、すでに延期が発表された。男子ほど国内リーグのスケジュールが過密ではないため、もっと良い状況で開催できる時期が検討されている。
試合は延期になったが、1月12日からポルトガルのファロで強化合宿をおこなっていたU20フランス代表とスタッフの複数名が陽性反応を示したと報じられている。集合日から検査を3度おこない、すべて全員陰性、それぞれのチームへ帰る前の4度目の検査でのことだ。陰性の選手は帰宅し、陽性反応者と濃厚接触者は1月24日まで現地のホテル内で隔離されている。
「あらゆる感染対策を慎重に実施していても、リスクゼロにはならない。しかし、陽性反応者が確認され次第、他の選手やスタッフへの感染を防止するための措置も迅速にとられて状況はコントロールできている。検査をおこなうことで効果的にウイルスを検知でき、感染拡大のリスクを抑えられるということが示された」と、シモン副会長は述べているが、フランス政府のシックスネーションズの開催可否の判断への影響が懸念されている。
大会のテレビの放映権料は1億1千万ユーロ(約140億円)で、参加国の各協会に配分される。昨年秋から無観客試合でチケット収入が無くなり、どの国の協会も財政的に追い詰められており、どうしても大会をおこないたいところだ。
これに対してシモン副会長は次のように述べている。
「経済的な理由だけではない。チームのパフォーマンスを維持するためにも、大会がなくなるのは望ましくない。しかし最も大切なのは社会のなかでの役割だ。フランス代表チームは、国民に喜びや熱狂、一体感を届ける役割を担っている。コロナ禍で人々は夢や感動や希望を必要としている」
ここまでフランス政府は、自由が制限されている困難な時期だからこそ、人々に娯楽を提供することが必要と考え、プロスポーツの大会を継続する方針をとってきた。もちろん、しかるべき感染予防措置を実施することが条件だ。
カステックス首相は、「最も大切なのは、健康である。経済の問題が、健康の問題より優先されることはあり得ない。しかし、決断する時には、心理的、社会的、経済的な問題も考慮される。残念ながらこの試合はまだ終わっていないから最終評価ではないが、現段階で客観視すると、わが国の感染状況は決してよくはないが、他国と比べると最悪ではない。いくつかの業種には休業してもらってはいるものの、経済的、社会的活動も崩壊はしていない」と、感染症対策と経済の間でギリギリのバランスをとるために腐心していることを訴えている。
ドーバー海峡を越えて、フランス代表がトゥイッケナムやアビバスタジアムに行くことが許可されるかどうか、ウエールズ代表とスコットランド代表が、スタッド・ド・フランスに来ることができるかどうか。
1月24日にフランス政府の判断が下されることになっている。