国内 2020.11.21

中大、今季リーグ戦の初勝利へ「何が何でもやろうとしていることを、やる」。

[ 向 風見也 ]
中大、今季リーグ戦の初勝利へ「何が何でもやろうとしていることを、やる」。
遠藤哲ヘッドコーチの話を聞く中央大の選手たち(撮影:向 風見也)


 11月20日夕刻。「すみません、抽象的な話で」と断る。

「結局、僕は意図的にやりたいんです」

 中大ラグビー部の遠藤哲ヘッドコーチ(HC)は、八王子市の堀之内にある寮の小部屋でコーヒーを淹れていた。長机の前の椅子に座る。

「意図的ではない不意打ちを喰らっても『俺らはこんなことではぶれないぞ』というところまで持って行きたい。意図的ではないことの嫌なところは、他人の力で左右されるところ。意図的であることは自主性の発信地でもあると思うし、自分で決められるから意図的になれる。意図的にやる。いま、そこが、できつつあります。時間はかかりましたけど」
 
 話題の種は、11月15日の法大戦だった。

 会場の埼玉・セナリオハウスフィールド三郷では、序盤からHOの藤原能らがシャープなロータックルを繰り出し相手のミスを誘発。2年生SOの津田貫汰のロングキック、長距離のペナルティゴールも相まって、前半を9-7とリードして終えた。

 ところが後半14分頃、敵陣深くまで攻め込みながらも落球すると、直後の相手ボールスクラムから右サイドを法大のFBの根塚洸雅主将、WTBの石岡玲英に一気に走られた。自陣10メートル線付近右で反則を犯すと、17分までに9-14と勝ち越される。22分、9-21とさらに点差を広げられた。

 さらに、テンポのよい攻めで16-21と追い上げた直後の30分頃、自陣ゴール前でキックオフのボールを捕り損ねてしまう。

 遠藤HCいわく「魔が差した」。間もなくスクラムを押し込まれ、再び16-28と突き放された。

 ノーサイド直前のスコアで23-28と粘れただけに、わずかな失敗に泣く悔しい結果となった。

 随所の好プレーに「意図的にやる」というスタンスが垣間見えたとあり、遠藤HCは「やろうとしたことの花が開いたところはいっぱいあった」と実感。もっとも、事前の筋書き通りに勝てそうだった一戦を不規則な形で落としたとあって、こうも反省した。

「理屈を突き詰めるのなら、理屈じゃない部分も凌駕するくらい突き詰めないと」

 その心を説くうち、ラグビーが思索の森への入口であるように思わせる。

「理論的に勝つ方法を順序立ててやっています。ただ、最後は理屈だけじゃない部分が絶対にある。例えばスクラムの理論がないから押されるというわけじゃなく、理論がなかろうが気迫で押し切れるという瞬間が、ラグビーにはあるんですよね。理屈じゃない部分を、大事にする。そのこと自体もまた理屈なのですが、その点まで理解できると、非常に深いチームになるなとは思っています。難しいですけどね、なかなか大人でもできないと思う」

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