流経大のアピサロメ・ボギドラウは、フィジーの森からやって来たムードメーカー。
澄んだ瞳のムードメーカーだ。
22歳のアピサロメ・ボギドラウは、流経大ラグビー部の2年生。身長190センチ、体重118キロのサイズで大胆に駆ける。普段は動画サイトで、自国フィジーのトッププレーヤーの動画をよく観るそうだ。チームメイトいわく、普段から明るい。
11月14日には、加盟する関東大学リーグ戦1部の第5節でマン・オブ・ザ・マッチを獲得。埼玉・セナリオハウスフィールド三郷で全勝同士だった日大とぶつかり、チャンスを引き寄せるビッグゲインと2トライ奪取で40-14と快勝する。
続く21日には、東京・秩父宮ラグビー場でリーグ戦2連覇中の東海大に挑む。
19日は茨城県龍ケ崎市内の本拠地グラウンドで調整した。
実戦形式のセッションでは、控えチームが東海大を模した動きで主力組に圧力をかける。好プレーが起これば見学組を含め皆でたたえ合う。パスがつながらないシーンがあれば、池英基ヘッドコーチが受け手と投げ手のコミュニケーションについてその場で確認する。
活気と緊張感あるトレーニングを終え、当日LOで先発予定の通称「アピ」は笑みを浮かべた。
「日大に勝って自信をつけている。皆で歴史を作ろうと、いい準備ができています」
フィジーに生まれた。
子どもの頃からペットボトルをボール代わりにしてラグビーを楽しみ、ディルクーシャーボーイズスクール、ラトゥカンダプレスクールで競技を続けるうち、「将来、プロになりたい。そのためには国外でスキル、知識ともにレベルアップさせたかった」と思うようになった。
定期的に現地入りする内山達二監督は、直接対面した少年の態度に触れ入部を勧めた。
「僕がたまたま(プレーを)見て、彼に連絡を取って会ったんです。『僕はうまくなりたいんだ!』と意欲にあふれていた。日本に合うと思いました」
本人の初来日は、入学を直前に控えた2019年1月。その頃、南半球は夏だったとあり、ハーフパンツとサンダルを履いて飛行機に搭乗。到着するや寒さに驚く。
グラウンドで驚かされたのは走り込みの量だ。
「フィジーでフィットネス練習と言えば、いくつかのサーキットメニューを何種類か組み合わせてやるんです。ただ、日本ではとにかく、走る!」
大学では高校から転向したLO、NO8で登録される。寮生活は高校から引き続きとあって、戸惑いは少ない。今年の春に外出自粛を強いられた時は「ラグビーができず、ストレスはたまった」ものの、木々に囲まれた龍ケ崎市の景観は気に入っているという。
「日本の大学では、トップリーグと同じようなレベルで食事やトレーニングもしっかりと管理されている。ここはフィジーと違う点です。高校時代の寮は森のなかにあって周りには何もありませんでした。このあたりは、お店はそれほど多くはありませんが、すごく便利です!」
将来は「トップリーグ(22年からは新リーグ)でプレーしたい」。20歳以下フィジー代表への選出歴があるため日本代表入りの資格が得られるかは流動的だが、自国と日本のどちらの代表チームでプレーしたいかと問われた本人は「先に声がかかったほうです」と回答する。
まずは、悲願の大学日本一達成を目指す。