偏愛・食い込み系記者の出場国プレビュー! ラグビー8カ国対抗戦 オータム・ネーションズカップ【フランス/スコットランド】
2020秋のスペシャル・トーナメントが11月13日に開幕。シックス・ネーションズにジョージアと南洋・フィジーを迎えて行われるオータム・ネーションズカップ2020だ。ラグビーリパブリックでは、出場各国に深く食い込む人物に原稿依頼。チームへの愛と造詣あふれるテキストを掲載する。第4回はグループBから。かつて日本代表のフランス語通訳も務めた事情通のスポーツライター・木村卓二氏、そしてスコットランドはUK在住の竹鼻智氏が綴った。
◆オータム・ネーションズカップ2020
○グループA
イングランド
アイルランド
ウェールズ
ジョージア
○グループB
フランス
スコットランド
イタリア
フィジー
笑うガルティエ。フランスは愛に包まれて
2020年秋、フランス代表は友愛に包まれている。国内は2度目のロックダウン、活動するのは代表とプロクラブのみ、自由と平等は制限されている。だが、レ・ブルーの練習に7人制と20歳以下の各代表が協力、代表も背番号に国内1941のアマチュアクラブの名前を記して10月31日のアイルランド戦に臨んだ。現役時代には、メディア嫌いで知られたファビアン・ガルティエ監督だが、最近の記者会見では、笑顔すら見せている。
11月15日に予定されていたオータム・ネーションズカップの第1節は、対戦相手のフィジーにCOVID-19陽性の選手が出たためキャンセルに。組織委員会によると、試合5日前に実施した検査の結果、「さらに」4人の感染が判明。キャプテンのセミ・ランドランドラの感染はすでに報じられていた。情報源により数は異なるが、それより前には9人とも言われる感染が伝えられており、大会への準備として予定されていたポルトガル戦もキャンセルという状況にあった。
2020年を象徴するような試合中止だが、むしろフランスにとっては追い風となりそうだ。フランス選手権TOP14を運営するLNRとフランス協会は、この秋の代表戦6試合に関し、1選手の出場数を最大3とすることで合意。つまり、ローテーションは義務である。10月の2試合(24日38-21ウェールズ、31日35-27アイルランド)に、現状のベストメンバーを続けて充てたため、最強布陣で充てることができるのは、あと1試合。ガルティエはフィジー戦をその試合に選択、第2節のスコットランド戦に向けては、31人の合計が173キャップ、1人平均5.5キャップという、より経験の少ないスコッドを発表していた。だが、フィジー戦が中止となり、これを変更、先の2試合で招集したメンバーを中心とするスコッドを再編した。結果、シックス・ネーションズで不覚を取ったスコットランドに、ベストメンバーで臨むこととなったのだ。
ガルティエ監督就任以降、成績は5勝1敗。シックス・ネーションズでは、レッドカードで自滅したスコットランド戦が響き2位となったが、同大会最優秀選手にSHアントワーヌ・デュポンが選出されるなど、レ・ブルーの存在感は際立っていた。そのデュポンとロマン・ンタマックのHB団の成長は著しく、いつでもどこでも激しく戦うFLフランソワ・クロスやキャプテンのFLシャルル・オリヴォンなど、FWは実に良く働く。最大の課題は反則の多さだが、ガルティエは選手たちのアグレッシブな姿勢を讃えており、必ずしもネガティブなものでもない。世界ランキングは4位に浮上した。
シックス・ネーションズで起用された選手数は30に留まる。メンバーを固定し経験を積ませたい、そんなガルティエの意向が表れている。だが、ガルティエは、「ポジションは練習で勝ち取るもの」と公言する。第3節以降大半を占めることになる、経験の浅い選手たちも、今大会での注目の的だ。
さて、今大会にも影響を及ぼす新型コロナウイルスだが、フランスが使用しているチームマスクが何ともお洒落だ。スコットランドのタータンも魅力的で、ジョージアの武骨な感じも渋くて味がある。だが、マスクに関しては、フランスの優勝は揺るがない。今大会、これ以上COVID-19禍が拡がらないことを祈るばかりだが、ピッチ外の動向に関しては、各チームのギアなどにも注目したい。