海外 2020.11.03

ソーシャルディスタンス忘れる興奮。ゴードン、豪州・NSW州クラブ王者に。

ソーシャルディスタンス忘れる興奮。ゴードン、豪州・NSW州クラブ王者に。
22年ぶりの感激となったゴードンクラブ。(撮影/Yasu TAKAHASHI)
豪州代表キャップ14を持つゴードンNO8ジャック・デンプシー。(撮影/Yasu TAKAHASHI)
ワラターズと契約したイーストウッドのSOテイン・エドメッド。(撮影/Yasu TAKAHASHI)



 オーストラリア・NSW州のクラブラグビー選手権「シュート・シールド」(Shute Shield)のグランドファイナルが10月31日(土)、ライカート・オーバルでおこなわれた。
 ゴードンがイーストウッドに28-8で勝ち、1998年以来22年ぶりに頂点に輝いた。

 ゴードンはかつてワラビーズのキャプテンを勤めたスターリング・モートロックも所属していた名門クラブのひとつ。しかし、近年はプレーオフ進出どころか、下位で低迷する厳しいシーズンが続いていた。
 一方、イーストウッドは、2014年、2015年に連覇を達成するなど、ファイナルシリーズの常連だ。

 今年は新型コロナウイルスの影響で開幕が7月中旬にズレ込んだ。その影響でクライマックスを迎えるこの時期は、すでにサマータイムとなっている。
 そんな中、今季のゴードンは充実のシーズンを過ごした。レギュラーシーズンを11勝1敗の首位で終え、堂々とファイナルシリーズに進出、この舞台まで一気に駆け上がった。
 イーストウッドはレギュラーシーズン5位に終わるも、準々決勝、準決勝で地力を見せ、グランドファイナルまで勝ち上がった。

 決戦の日は、雷雨の天気予報だった。しかし試合開始時には陽が差し、人数制限があるものの、会場には多くの観衆が集まった。
 そんな中でのキックオフ。試合開始直後はゴードンが勢いを見せるも、先手を取ったのはイーストウッドだった。フェーズを重ねた後、豪州7人制代表のLOティム・アンスティが抜け出す。ゴールまで一気に駆け抜けた。

 ただ、先制を許したゴードンに動揺はなかった。
 昨年のワールドカップにも出場したNO8ジャック・デンプシー(ワラビーズ/ワラターズ)等を中心に積極的にボールを前に運ぶ。PGを重ねて逆転に成功すると、待望のトライも生まれ、14-5でハーフタイムを迎えた。

 力の入った展開だった前半途中、こんなこともあった。
 バックスタンド側の芝生立ち見席で、盛り上がる多くの観衆がソーシャルディスタンスを保てなくなったのだ。会場管理に来ていた警察、ならびに保健省スタッフから連絡を受けたレフリーが試合を止める場面があった。

 場内アナウンスが流れた。
「この試合は保健省による厳格なガイドラインの下運営されており、観戦には各々距離を取らなくてはなりません。それができなければ試合を再開することはできません」
 ソーシャルディスタンスを保つように促した結果、観衆の理解と協力が得られ、試合が再開した。

 後半もイーストウッドが先手を取った。先日、来季のワラターズとの契約が発表されたばかりの20歳、新鋭SOテイン・エドメッドがPGを決めて点差を縮める。
 さらに勢いづいたチームは再三ゴードン陣深くに攻め込み、ゴール前スクラムで強力FWが結束した。ゴードンFWは圧力を受けて反則を繰り返す。イーストウッドはそれでも執拗にスクラム勝負を挑む。アームレスリングのような時間が続いた。

 やがてゴードンにイエローカードが出る。イーストウッドはさらに勢いづいた。
 追う側は当然、ふたたびスクラムを選択。次はペナルティトライか…と誰もが思った時、レフリーのホイッスルと同時に上がった手はゴードン側だった。
 イーストウッドのペナルティ。ゴードンは最大の難局を乗り切った。

 その後、1トライ(G成功)を追加したゴードンは21-8と点差を広げた。
 雷が鳴り、雨が降り出す。ゴードンは本降りとなった試合終了間際にもラインアウトからモールで押し込み、勝負を決定付けるトライ(G成功)。ラストワンプレーとなってからの相手の猛攻にも耐え、28-8で歓喜の瞬間を迎えた。
 シュート・シールドを手にするのは、1952年の初制覇から数えて9度目のことだった。

(文/Yasu TAKAHASHI)

【Shute Shield 2020レギュラーシーズン最終順位】
1  ゴードン(Gordon)
2  イースタンサバーブス(Eastern Suburbs)
3  ノーザンサバーブス(Northern Suburbs)
4  シドニーユニバーシティ(Sydney University)
5  イーストウッド(Eastwood)
6  ランドウィック(Randwick)
7  サザンディストリクツ(Southern Districts)
8  ワリンガ(Warringah)
9  マンリー(Manly)
10 ウェストハーバー(West Harbour)
11 ハンターワイルドファイヤーズ(Hunter Wildfires)
12 トゥーブルース(Two Blues)
13 ペンリス(Penrith)

【NSW Premiership Competition 決勝結果】
◆Shute Shield(1st Grade)
Gordon 28-8 Eastwood
◆Colin Caird Shield(2nd Grade)
Sydney University 43-27 Eastern Suburbs
◆Henderson Shield(3rd Grade)
Gordon 29-24 Sydney University
◆Henderson Cup(4th Grade)
Randwick 15-13 Gordon
◆W.Mcmahon Memorial Shield(1st Colts)
Sydney University 27-26 Eastern Suburbs
◆Shell Trophy(2nd Colts)
Gordon 23-13 Randwick
◆Bill Simpson Shield(3rd Colts)
Sydney University 10-7 Gordon
◆Gregor George Cup(Club Championship)
Gordon

◆Sydney Women’s Rugby/ Jack Scott Cup
Sydney University 22-17 Randwick

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