国内 2020.11.03

家の壁で掴まっていたらラグビー勧められた。法大・根塚洸雅主将、活動停止明けもハツラツ。

[ 向 風見也 ]
家の壁で掴まっていたらラグビー勧められた。法大・根塚洸雅主将、活動停止明けもハツラツ。
日大戦の後半43分、トライ直前の法大FB根塚洸雅(撮影:松本かおり)


 関東大学リーグ戦1部の後半戦を迎えるに際し、法大ラグビー部は苦境に立たされた。

 10月24日、サッカー部から新型コロナウイルスの感染者が出たのに伴い、同部が拠点とする多摩キャンパス(東京都町田市)内で動く体育会系クラブが練習できなくなった。ラグビー部の駒井孝行監督は説明する。

「先週の水曜(10月21日)、サッカー部に感染者が出た。多摩の体育会、全チームが火曜(27日)まで活動を停止しました。再開させたのは水曜(28日)でした」

 大学選手権出場枠にあたる3位以内を目指しながら、それまで1勝2敗と負け越していた。31日に予定された落とせない試合に向け、準備が十分にできないのはさぞ苦しかったろう。ただし4年生の根塚洸雅は、現実を直視しながらも泣き言は言わない。

「チームでの活動が全くできなかったので、個人的な筋力トレーニングを。それも、学校(キャンパス内のジムを含む)が使えなかったので自重のトレーニングしかできなかったんですけど。それから寮内で少人数のミーティングを。チームでの練習は1週間弱、できなかったのですけど、自分の弱いところを各自で鍛えていました」

 どのようにラグビーと出会ったのか。そう問われれば、「親から聞いた話でいうと…」とおぼろげな記憶を掘り返す。

 幼稚園の年中組だった頃、兄の聖冴とともに自宅で壁をよじ登っていると、ちょうど訪れていた鍵の修理業者の男性が「その身体能力を、ぜひラグビーで活かして!」。その男性は、ラグビーの指導に携わっていたようだった。間もなく、兄の友人が在籍していた尼崎ラグビースクールに2人そろって入会した。

 兄の聖冴はその後、京都成章高、法大を経て2019年にホンダ入り。弟の洸雅も大阪の東海大仰星高、さらに法大で競技を続け、大学卒業後の国内トップリーグ挑戦を決めている。

 身長173センチ、体重82キロと一線級にあっては決して大柄ではないが、走路を見つけるスピードや相手をかわすフットワーク、献身的な防御、キックチェイスを長所に高校日本代表、20歳以下日本代表に選ばれた。仲間との対話を重視する姿勢も評価され、行く先々でリーダー格となる。

「ラグビーに関しては、思ったことは常に言うようにはしています。そこは手を抜きたくない。思った感情は常に出す。たとえそれが間違っていても、相手が『僕はこう思う』と答えてくれることで自分の成長がある。黙ってがまんをするということは、そんなにしないのかなと」

 学生ラストイヤーにあたる今季は、同級生の吉永純也とともに共同主将へ就任。3月上旬には町田市内の寮を一時解散し、6月中旬まで活動再開ができなかったものの、「学生主体のチームに」とのスタンスを掲げた。

 自粛中に残った寮へ、構内のジムにあった器具を一時的に移す。トレーナーから課されたメニューを皆で遂行するためだ。もともとチームで用いていたコミュニケーションツールを開き、各自でデータを書き加えた。

 自発的におこなうには精神力が試されそうな走り込みも、怠らないよう工夫した。選手同士で専用のアプリをセレクトし、総走行距離を共有してきた。

「6月に集まった時にガリガリになっている選手はいなかったです」

 10月のリーグ戦開幕前に実戦機会が限られるなかでも、できることを整理した。

「基礎の部分をどれだけ積んでいけるか。基礎とラグビーIQは自分たちだけで成長させられる。自分たちでできる部分は100パーセントにして試合に臨みたい」

 サッカー部の件に伴う活動停止後最初の試合は、東京・秩父宮ラグビー場でおこなわれた。

 対する日大は昨季2位で、今季開幕3連勝中と結果を残していたが、この午後に先制したのは同6位の法大だった。

 前半17分、自陣10メートル線右でペナルティキックを得る。球を右タッチラインの外へ蹴りだすのが一般的と見られるなか、一転、左大外へ展開する。

 左中間でバトンを受け継いだのが、この日FB兼ゲーム主将として先発の根塚だった。

 スピードに乗って、目の前にいた相手主将の藤村琉士を振り切る。敵陣22メートル線付近で、左に立つ石岡玲英へパス。最後は石岡の蹴ったボールを、根塚がインゴールエリアで押さえる。直後のゴールキック成功で7-0。HOで出場の藤村を唸らせた。

「日大に隙(があった)というか…。あそこでは、全然、セットしていなかったので。相手チームをリスペクトして、隙を作らないようにしようと思いました」

 守りでも光る。7点差を追う前半終了間際だ。日大がボールの扱いに手間取りながらも左大外のエリアを約70メートル、前進も、根塚が自陣ゴール前右まで回り込んでロータックル。フィニッシュ寸前のナサニエル・トゥポウに落球させた。

 直接、プレーに関わらぬ間も声を張った。味方へ自分の立ち位置を伝えたり、次のプレー選択をサポートしたり。

「自分が言葉を発する性格なのは自分でもわかっているわけで。自分のいいプレーをするとか(周りの)いいプレーを生み出すために声かけをして、ひとりよりもチームで勝つ。声は出せば出すほどチームにプラスになる。悪い流れを変えるのも、最終的にはコミュニケーション能力なのかなって」

 後半開始早々のチャンスを逃すと、徐々に向こうのパワーに押し切られる場面が増える。スクラムを押される。

 14点差を追う15分頃には、敵陣22メートルエリアまで攻め込みながら相手にインターセプトを許す。間もなく7-28とスコアを広げられた。

 ノーサイド。22-35。法大は敗れた。もっとも、後半ロスタイムにフィニッシュと気を吐いた根塚はこうだ。

「自分たちで(点の)取りどころで取り切れなかったのが敗因。(上位チームとの)実力の差はそんなに感じなかったので、リーグ戦の残り3試合、取りどころで取り切れるようなチームになっていきたいです」

 秋が深まってもなお、下を向かない。

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