流経大の坂本侑翼主将、日々のミーティングで「次、どうするかを共有できる」と自信。
流経大ラグビー部の主力組は、全体練習を終えるとグラウンド脇の個室へ集まる。
各々が意見を出し合い、その日の練習を振り返る。授業で学んだことを頭に定着させるため、復習を怠らないイメージか。
坂本侑翼主将は言う。
「練習後のミーティングは、夏の校内合宿(8月上旬の約1週間)の頃から始めました。去年の大学選手権の前もこれをやって、いい文化だと感じて、今年もやろう! となりました。その日に思ったことを共有することで、次にどうするかも共有できる。それが、練習の質につながると思います」
昨季は8月から11月までの関東大学リーグ戦1部を8チーム中3位で戦い終え、12月から参戦した大学選手権の3回戦で2009年度から同9連覇の帝京大に勝利。今季も10月4日に開幕のリーグ戦で、目下、開幕3連勝中だ。
その背景には、地道な振り返りが積み重なっているのだろう。例えば、法大に28-10で勝利もハンドリングエラーの多かった今季初戦の直後には「(ミスの根本原因は)ポジショニング」だと反省した様子。坂本はこうも話していた。
「レビューをもとに、自分たちのターゲットを決めて、それを練習で意識しながら、一個、一個、克服する。試合経験が少なく、まだまだ伸びていかなきゃいけない。いまやっているミーティングを含める形で一戦、一戦、成長する。(チームの哲学でもある)ダイナミックラグビーを追求して、まずはリーグ戦の優勝を狙いたいです」
身長178センチ、体重97キロで背番号7をつける。味方のキックを追うチェイスラインへ入って長い距離を走り、鋭いタックルとジャッカルでチャンスを得る。人の嫌がる仕事を率先しておこなう。
5歳の時に柏ラグビースクールで競技を始めてから、千葉ラグビースクール、千葉セントラルジュニアラグビークラブ、流通経大柏高と、ずっと地元の千葉のクラブで活動。いまは茨城県龍ケ崎市を拠点とし、4年目のシーズンを迎えている。
新型コロナウイルスの流行は、約150名の部員に少なからぬストレスを与えていた。
他大学が緊急事態宣言の発令を前に寮を一時解散させるなか、流経大は都心から離れていることもあってか寮生活の継続を基本線とした。帰省の希望も受け付けられていたが、大きな流れから逸脱するのは誰にでも勇気がいる。
春季大会が中止となってリーグ戦の開催可否も流動的ななか、思うような日常を送れぬ部員が重苦しい空気を漂わせていたようだ。
坂本の述懐。
「4~6月あたりは、『(試合は)本当にあるの?』みたいな。また、他のチームが解散していたなか、雰囲気など、いろんな要素が積み重なって、しんどい部分はありました。周りには、リフレッシュする場所もないので…」
浮かない顔をする後輩には、「目標は大学日本一だから」と念押しするほかなかった。「皆のモチベーションが上がってよくなってきた」のは、夏場にリーグ戦の実施が発表されてからのことだ。
連日のミーティングで「練習の質」を上げられるようになるまで、いくつものハードルを乗り越えてきたのだ。
いまは24名にも及ぶリーダー陣とともに、新生活を作る。
「(リーダーには)一人ひとりに役割がある。寮の管理、グラウンドのこと、体調管理とセクションが分かれていて、それぞれが約150人の皆を動かしている。自分としては負担が減って、チームにフォーカスできて、動きやすいです」
特に助けられるのは、「責任感のある同期」の存在だ。
流経大は毎年、夏までに部員をハイパフォーマンス、ドラゴンズ、バーシティと3つのチームに分割。ハイパフォーマンスがリーグ戦や大学選手権で大学日本一を目指す一方、ドラゴンズ、バーシティはそれぞれ東日本トップクラブリーグのディビジョン1、ディビジョン2に加盟する。各組に登録されてからは、シーズン終了まで昇降格がおこなわれない。
いわば、多くの部員が早くに1軍入りの可能性が断たれる格好なのだ。士気を保ちづらいなか求められることが、各組にいる4年生の誠実な態度なのだと坂本は見る。
「クラブチームの選手も、4年生を中心によくやってくれている。(モチベーションの下がった選手には)僕も話しかけてみるよう意識はしています」
坂本ら2020年のハイパフォーマンスは、11月3日、東京・駒沢オリンピック公園陸上競技場で中大とぶつかる。来年1月の大学選手権決勝まで、着実な歩みを重ねたい。