7月まで活動中止。夏合宿は出発直前に許可…。2020年の東海大ラグビー部。
関東大学ラグビーリーグ戦で3連覇を狙う東海大の木村季由監督は、「昨日までずっと自問自答ですよ」。こう漏らしたのは8月17日。長野・菅平合宿の初日練習後だ。
今季は、新型コロナウイルスの感染拡大により著しく活動が制限されてきた。チーム強化を促す合宿の開催が大学から許されたのは、出発直前のことだった。
現地入り後も、さまざまなことを思う。果たして、この選択が正しかったのか…。この選択を正しかったと振り返るには、気の抜けない日々を過ごすしかないのだろうか…。
「理屈ではわかっているんですよ。(合宿は)やらないのが一番です。でも、大学生から彼らができることを奪うのは、違うよな、って。感染防止と活動を両立させるにはどうしたらいいか、いまある情報のなかで考えるしかない」
練習スケジュールの合間は、感染しづらい行動様式を貫く。食堂に入室する人数を制限したり、日々の買い出しは代表者に任せたり。約2週間の滞在を経て、神奈川県内の寮へ戻る。終わりなき旅を続ける。
「帰ったら帰ったで、今度は寮生活。授業が始まって学生の交流が始まった時にどうなるか…」
練習施設のある湘南校舎が閉鎖したのは、4月のことだった。部活動に加え、学生の入構も禁じられた。当初は数週間程度で普段の暮らしを取り戻せると見られていたが、原則的に「無期限」とされたロックアウトは季節をまたいで続く。全173名が入るキャンパス付近のラグビー部寮からは、1人、また1人と部員が離れていったと木村監督は言う。
「当初はグラウンドだけなら(すぐに)使えるようになるという話だったんです。ところが1日、1日どんどん情報が変わっていき、結局、練習は全部ダメだということになった。そうなったら寮で全員をコントロールするのは難しい。『よっぽどの理由がない限りは帰りなさい』としました。最終的に残ったのは30名と少し。事情があって(家に)帰れない者は寮で生活。もともと学内で食事をしていたので、(自粛期間中も)感染対策をしながらの(構内での)食事は許可していただきました」
当時の残留組は、「寮の裏にウェイト器具を持ち込んで、そこで人数管理をしながらトレーニング」。可能な範囲で身体を動かした。
帰省組には、放任と管理のバランスをとって接した。選手によって置かれた環境が違うため、合同のオンライントレーニングを求めるのは難しいと感じた。だからコンディショニングは各自に委ねたが、定期的な検温などは義務付けた。何よりその提出用紙には、保護者のサインも求めた。責任の所在を明らかにした。
「(検温などで)適当に数字を書いて、適当にハンコ押そうと思えばいくらでもできます。決して性善説ではないですが、僕らの管理はそのうえで成り立っている」
画面上でのミーティングは頻繁におこなった。「チームのいろいろなプレーのスタンダードについて、週に1回ずつ学生に課題を出した」。頭のなかは整理できた。
「いままで『みんなわかってるだろう』と思ってやっていたことが、意外と細かくできてなかったことに気づいた」
しかし、間もなく厳しい現実に直面する。
本格的にトレーニングを始めた7月以降、選手間の身体の状態にばらつきが見られたのだ。何よりつらかったのは、人が集まり始めてからの活動にも制限がかかったことだろう。