【コラム】続スガダイラは生きている。
毎年1000校以上訪れるというラグビー夏合宿の聖地、菅平に、今年入った宿泊予約は40あまり。直前までキャンセルが続いて実際に訪れたチームはわずか、31チームになった。高校チームはその中でも多くの割合を占めた。全国の数%の恵みに預かったクラブは、1試合1試合を大切に戦った。公立、私立の違いや経済面、さまざまな立場の人の理解や協力を勝ち取った者だけが「山」に上った。
どのチームも、ようやく実現した2月以来の手合わせを全身で楽しんでいた。もちろん、ラグビーはいつでも痛いし苦しいのだが、高校生たちの顔は覇気にあふれていた。
8月14日の23番グラウンドでは、大阪朝高と大産大附の練習試合が行われていた。レフリーを務めたのは、コーチや先生ではなく、本職のレフリーだ。関西協会・泉太郎レフリーは、大産大附の夏合宿に同行するようになって8年目になる。
「協会から示されたその年、その年の(判定)基準はもちろん、みんな把握して吹いているのですが、それを実際に高校生の試合でやったらどうなるのか、社会人では…など、実戦でしかわからないことがあるんです。選手たちとのコミュニケーションも、重要な要素です」
夏合宿はレフリーにとっても、選手たち以上に重要な実戦経験の場となっている。
今年は各協会の講習などは、オンラインに切り替えられ、行われた。本来は各地域協会が菅平などで主催する実地の講習会はなく、となると、それぞれのレフリーはレベルに関係なく、自費で菅平に来ることになる。試合そのものが貴重な今年、トップチーム同士の対戦をシーズン前に体験できることは、たいへん貴重な機会だった。
一方で、複数のチームが日々、相手を変えつつコンタクトプレーを繰り返し、集団で生活する場所の真ん中に身を投じることは、社会人として大きなリスクも背負っている。もちろん誰もが最大限の注意を払って過ごしている。ただ、例えばレフリーにも家族がいる。さまざまなハードルを突破してきた人でなければ、この場にはいられなかった。
あるレフリーは、自分がいかに恵まれた環境で、多くの人に支えられているかを話した後に。静かに言った。
「ここに来ている人は、覚悟決めた人だけですね」