日本代表 2020.07.31
【コラム】 プロとアマとフクオカくん

【コラム】 プロとアマとフクオカくん

[ 成見宏樹 ]
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 大学生の卒論なら徹夜を重ねて、結果、できようとできまいと本人の勝手だが、フクオカくんはプロ選手で2019年のスターでもある影響力の持ち主だ。アスリートなら挑戦したいに決まっている舞台への夢があり、もう一方の手には自分にしかわからないもう一つのワクワクの素、医者の夢を握り締めている。人の夢も託されてしまう五輪と、極めて私的な夢と。彼個人にとって重さはほとんど同じなのだろう。本当の本当は二兎を追いたいだろう。それでも諦めたのは、彼が今、何者であるかを見つめたからではないか。自分が、プロラグビー選手であるこからだと思う。

 ポジティブな空気しか感じさせないフクオカくんだが、なかなかしんどい判断だったに違いない。

 これからは人としてラグビー以外のことにも時間を割くと決めた。今、職業として15人制プロ選手である自分は、7人制のことまでは、やりきれない可能性がある。プロだからこそ、できないことにしっかりと線を引かなければならなかった。

 そういえば、筆者の卒論のテーマはスポーツのアマチュアリズムとプロフェッショナリズムについてだった。1995年3月、同年の第3回ワールドカップ開催直前、イコール、ラグビーの世界でプロ化が容認される(ラグビー界ではオープン化という)の夜明け直前だった。

 あの頃以来、アマチュアの精神とプロの矜持は両立する、という思考を、まだ信じている。フクオカくんはそれを体現しているラグビーマンの一人だ。

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