コラム 2020.07.30
【コラム】喧騒の中に。

【コラム】喧騒の中に。

[ 谷口 誠 ]

 忘我の熱狂、そして平静を取り戻した後に我が身を振り返って「路線修正」する。混沌の中で自分や他人が変容するようなこの一連の過程は、様々な文化が生まれる場所だとまでセールは言う。大げさに聞こえるかもしれない。しかし、世界中のファンが詰めかけた昨年のスタジアムの光景を体験した人ならば、うなずける部分もあるのではないか。

 セールが「多様性の激怒狂乱」と詩的に表現したスタジアムの熱狂が国内から消えて5か月が立つ。ウイルスは再び広がり、満員の客席が戻るにはまだ時間が掛かりそうだ。

「スタンドの喧噪の中で叫ぶものを聞きたまえ。秘密はこの騒音の中にひそんでいる」。こう書き残したセールがもう1年長生きしていれば、このままでは文化が生まれない、と嘆いたかもしれない。

【筆者プロフィール】谷口 誠( たにぐち・まこと )
日本経済新聞編集局運動部記者。1978年(昭和53年)生まれ。滋賀県出身。膳所高→京大。大学卒業後、日本経済新聞社へ。東京都庁や警察、東日本大震災などの取材を経て現部署。早稲田大学大学院スポーツ科学研究科で社会人修士課程修了。ラグビーワールドカップは2015年大会など2大会を取材。運動部ではラグビー以外に野球、サッカー、バスケットボールなどの現場を知る。高校、大学でラグビーに打ち込む。ポジションはFL。

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