コラム
2020.07.30
【コラム】喧騒の中に。
忘我の熱狂、そして平静を取り戻した後に我が身を振り返って「路線修正」する。混沌の中で自分や他人が変容するようなこの一連の過程は、様々な文化が生まれる場所だとまでセールは言う。大げさに聞こえるかもしれない。しかし、世界中のファンが詰めかけた昨年のスタジアムの光景を体験した人ならば、うなずける部分もあるのではないか。
セールが「多様性の激怒狂乱」と詩的に表現したスタジアムの熱狂が国内から消えて5か月が立つ。ウイルスは再び広がり、満員の客席が戻るにはまだ時間が掛かりそうだ。
「スタンドの喧噪の中で叫ぶものを聞きたまえ。秘密はこの騒音の中にひそんでいる」。こう書き残したセールがもう1年長生きしていれば、このままでは文化が生まれない、と嘆いたかもしれない。