海外 2020.06.12

退路を断って移籍。小倉順平は世界を広げた。

[ 向 風見也 ]
退路を断って移籍。小倉順平は世界を広げた。
2020スーパーラグビー、2月末のハリケーンズ戦でプレーする小倉順平(Photo: Getty Images)


 悔いなき道を歩んだから、どんな結末も受け入れられた。
 
 日本代表4キャップ(国代表戦出場数)の小倉順平は今年、国際リーグのスーパーラグビーに日本から参戦するサンウルブズにシーズン途中から移籍していた(公式発表は第2節当日の2月15日)。新型コロナウイルスの感染拡大などのため5月30日にチームは解散したが、前向きに総括した。

「小さいスキルのところなどで学ぶことが多かった。行ってよかったといまも思っています」

 身長172センチ、体重82キロの27歳。桐蔭学園高、早大を経て2015年に国内トップリーグのNTTコムへ入り、3年目に社員からプロへ転向していた。

 もっとうまくなりたい、もっと成長したい。心の底から自分自身に期待した。その延長線上で、2017年にも参加したサンウルブズへの完全移籍を目指した。クラブは今季限りでスーパーラグビーから除籍されそうだったとあり、世界で戦うチャンスを逃したくなかった。

 しかし、今年は、スーパーラグビーとトップリーグの日程がほとんど重なっていた。NTTコムとの契約期間が残っていた小倉は、要望を貫くべく会社側と何度も、何度も話し合った。と、内容が内容なだけに、「誰にでも相談しまくるということはできなかった」。限られた人間と対話を重ねた。

 もしも契約違反に伴うペナルティが発生したら、それも飲むつもりだった。腹をくくった。話をつける前には、1月からのトップリーグで4試合に出場していた。

「送り出してくれたNTTコムには感謝しています。シーズン中に(チームを)出るって、普通ではないこと。迷惑をかけたと思っています」

 2017年以来の日本代表復帰を目指す小倉は、晴れて加わったサンウルブズで沢木敬介コーチングコーディネーターと邂逅(かいこう)。日本では敵軍のサントリーの指揮官として対戦してきた沢木の指導に「僕にも悪い癖がついているのですが、それを指摘してもらえる人でした」と感嘆した。

 その言葉からは、指導対象をよく見て、改善点をシンプルに伝える沢木の様子がうかがえる。

「『パスを投げる時はもう少し(腕を)伸ばしきったら』とか『仕掛け方がばたばたしている』とか、いままで自分が当たり前にやっていたことへ『こうしたらもっとよくなる』という教え方です」

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