影のヒーローは努力の人。ヤマハの三浦駿平、早大日本一までの軌跡。
1月11日の大学選手権決勝で11季ぶり16度目の優勝を果たした早大ラグビー部にあって、影のヒーローと呼ばれたのは当時4年の三浦駿平だ。
約5万7000人が集まった東京・国立競技場。身長187センチ、体重103キロのLOは、魚雷のように刺さっては起き上がりの繰り返し。チームで「勝ちポジ」と名付けたコンタクトへ向かう体勢作りに、とにかくこだわる。
かくして、前年度王者の明大に前半を31-0とリード。45-35と勝ち切った。
主将だったSHの齋藤直人は後日、印象的な場面を聞かれ「三浦君のプレー」と応じている。配慮をにじませた言葉選びに、同級生への敬意がにじむ。
「すごい努力家で…と言うとなんか上からみたいになっちゃうのであれなのですが、けがしていた期間も、ちゃんとウェイト(トレーニング)をやる人でした。ウェイトのレスト(休息)の間も勝ちポジの姿勢を意識していたり、(全体)練習が終わった後もタックル練習をしていたり。そんな選手が決勝ではアタックでもディフェンスでも完璧なプレーをしていて…。準備、努力って裏切らないなって、心に(グッと)来ましたね」
秋田中央高から早大入りの三浦。大学1年時からベンチ入り争いに絡んだものの、本人の実感は「先輩についていくので精いっぱい。自分のプレーはできなかった」。山下大悟前監督が相良南海夫現監督にバトンタッチして迎えた2018年度も、「監督、コーチ陣もいい人だったので違和感なく臨めました」と実感しながら要所でけがに泣いた。
何より、その「いい人」だった首脳陣から厳しい評価を下される。
「(けがから)復帰後もアタックでノックオン(落球)が多かったり、ディフェンスでも反則をしてしまったりと、プレーが荒かった。負けたら終わりという(トーナメント制の)大学選手権の試合では使いづらいと言われました」
ただし、転んでもただでは起きないのがこの人だった。ラストイヤーは「安定感」を重視。加盟する関東大学対抗戦Aの最終戦(12月1日/東京・秩父宮ラグビー場)では明大に7-36と大敗も、それを肥やしにした。相手の波状攻撃に苦しんだ経験から、齋藤の言葉通り「勝ちポジ」への意識を高く持ち直した。何より、タックル時に相手の足元へ上体だけが突っ込んでしまう癖を反復練習で改善。日大、天理大を倒すなか、その感覚を磨けたという。
サンウルブズでもプレーした同級生に「努力は裏切らない」と実感させたハードワーカー。この春からは静岡のヤマハに加わり、国内トップレベルの舞台に挑む。