【ラグリパWest】福本家の春。
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福本家にとって最良の春がやって来る。
家族の結びつきは楕円球によって強さが増した。
父の正幸は神戸製鋼のチームディレクター。仲間からは「ゴリさん」と呼ばれる。
「子供たちは自分たちで努力して未来を切り開いて進んでくれています。これもラグビーのお蔭です」
52歳の父は現場の責任者として、前回のトップリーグで深紅のジャージーを15季ぶり2回目の優勝に導いた。連覇を狙う今季のリーグ戦でも開幕から4連勝中だ。
福本の家を次代につなぐ子供たちは3人。長男の泰平、長女の真由、次男の航平である。それぞれ2学年ずつ空いている。
泰平は関西学院大を卒業し、この4月、関西電力に就職する。
「ラグビーが好きないい家に生まれてよかったです」
4年生でCTBのレギュラーを確保。56回目の大学選手権では8強入りに貢献した。準優勝する明治大に14−22と善戦する。
真由は同じ大学で新3年生になる。トレーナーとして主に選手たちの体重を管理する。12月には兄と一緒に秩父宮に行けた。朱紺と紫紺の戦いを当事者として見る。
「おにいちゃんがAチームにいてくれてうれしかったです。すごいなあと思います」
尊敬のまなざしを向ける。
2人は他界した祖父・幸弘の後輩になった。昭和30年代にCTBとして活躍した祖父と泰平は同じ背番号13を背負う。
末っ子の航平は慶應大に入学する。こちらは父の後輩になる。AO入試で環境情報学部に合格した。
「受かった時は実感がわきませんでした」
文武両道。常翔学園ではFLとしてレギュラー。99回全国大会では御所実に7−26と破れるが、4強進出の力になった。元々はBK。SOやCTBもこなし技は多彩だ。
福本の親族にもラグビーは近い。
伯母の美由紀は日本代表の元フランス語通訳。前回のW杯でスクラムコーチのマルク・ダルマゾにつき、3勝をサポートした。
祖母の洋子の実家は天理だ。孫たちの好物、泰平と真由はハンバーグ、航平はひじきの煮ものを作って食べさせる。
母・千智(ちさと)はラグビーを介して父と知り合い、1997年に結婚した。
「いつの間にか子供たちの『おっかけ』をするのが生きがいになりました。楽しませてもらって、ありがとうと言いたいですね」
愛称は「アグネス」。OL時代に長い髪がアグネス・チャンに似ていることからついた。
「でもケガが心配です。スマホが鳴るたびに次は誰かなとどきっとしてしまいます」
3人は順風満帆だったわけではない。
泰平は大学の3年間、公式戦出場は0。小2から兵庫県ラグビースクールで幼稚園児だった航平と競技を始めるも、中学ではバスケットボールを選ぶ。170センチほどの身長のため、高校ではラグビーを再開。御影(みかげ)は中央では無名の県立校だった。
「大学ではみんな全国レベル。練習もしんどかったです」
救いは2年から監督になった牟田至。「タックルしないやつは使わない」という方針を打ち出してくれた。毎日の自主練習では肩当てを繰り返し、タックルで必要な背中の筋肉も漕艇の練習マシンなどで鍛え続けた。