国内 2020.01.24

クボタ入団「やったろう!」 朝鮮大BK金秀隆

[ 見明亨徳 ]
クボタ入団「やったろう!」 朝鮮大BK金秀隆
金秀隆。「大学1年生からトップリーグが目標でした」(撮影:見明亨徳)


 1月20日、クボタスピアーズは2020年の大卒新入団選手10名を発表した。
大学王者に返り咲いた早大の司令塔SO岸岡智樹、明大トライゲッターWTB山崎洋之、天理大主将FL岡山仙治、同大LO堀部直壮ら高校日本代表、U20日本代表、ジュニア・ジャパンなど同世代をトップで走ってきた名が連ねた。
 その中で関東大学リーグ戦2部の朝鮮大から金秀隆(きむ・すりゅん、大阪朝鮮高)がユーティリティBKとして入団を決めた。ラグビー界でも無名のコリアン、トップリーグに挑戦する強い思いを聞いた。

 朝鮮大からトップリーグチームに入るのは2011年に福岡サニックスブルースに入団したLO黄徹秀(ふぁん・ちょるす。東京朝鮮高)、LO/FL慎賢宇(しん・ひょんう。東京朝鮮高)以来9年ぶり4人目となる。1人目は徐吉嶺(そ・ぎるりょん。愛知朝鮮高→2007年ヤマハ発動機ジュビロ)。
「入学する時にトップリーグに入ると決めていました。これも朝鮮大の先輩たちがいたから道ができていた」と感謝する。

 金がトップリーグ関係者の目にとまったのは2年生から3年生になった時だ。3年の2018年4月に開催された「第32回関東大学ラグビーフットボール連盟セブンズ大会」。
 186センチの長身BKはリーグ戦1部の流経大に1回戦5-33、敗者戦は日大に20-40と敗れたが、しなやかなランを見たクボタから声がかかった。
「トップリーグはすべての試合を(映像で)見ています。クボタはすばらしいチーム。練習にも参加して思いが強くなった」という。
 一方で、強力な同期をはじめ世界トップの顔が集まるトップリーグ、チーム内の競争に勝てないと公式戦のピッチに立つことはできない。
「(強みは)ランニングラグビーです。根拠はありませんが、1年目から試合にでるために人一倍努力して『やったろう!』という気持ちが強い。朝鮮大からトップリーグに行くことで朝大の後輩や、大阪、東京朝高の選手にチャンスはあると思ってもらえたらいいなと思います」

 金は高校2年時に全国高校大会(花園)にWTBとして出場した。3年時は大阪府決勝で大阪桐蔭に敗れた。現在、大阪朝高、東京朝高の有望選手は関東や関西の有力大からスカウトされる。
 金の代でも明大PR安昌豪(あん・ちゃんほ。サンウルブス練習生、キヤノン入団予定)、日大HO金政豪(きむ・じょんほ)、同大SH金正太(きむ・じょんて)らがいる。
「関東の2つの大学から勧誘がありました。だけど自分は朝鮮大に進んで朝大のラグビーを守りたいと思いました」
 2つ上の兄、秀昌(すちゃん)さんは大阪朝高で1-3年間花園へFBとして出場した。卒業後は朝大へ。兄と一緒の道を歩んだ。1年からFBでレギュラーを任される。
「入ったときチームはリーグ戦2部に昇格した年でした。部員が少なくて。高校時代は勝つラグビーをしていた。大学ではボコボコにされたりしました。少ない中で考えて練習をした。1年は1勝、2年と3年はゼロ。ようやく4年で2勝できた。一歩ずつ進めてこられたかな」と振り返る。毎年、シーズン最期の試合は3部上位との入替戦だったがしのいでチームを2部に残した。
 大阪朝高同期で大学卒後もラグビーを続けるのは安と2人だけという。「いつも会っています。トップリーグで戦おう、と話しました」。クボタには2年先輩のLO孫昇己(そん・すんぎ)がいる。「同じチームで頑張ろう」。

 体育学部4年生、いまも朝から昼まで週5日、授業を受ける。卒論のテーマは今年1年のラグビー部で得た「チーム・ビルディング」。プロ選手契約を結んだ。「ラグビーが好きで集中してやりたいタイプ。セカンドキャリアは、考えていません」。

強みはしなやかなラン。1年目から勝負する(撮影:見明亨徳)

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