コラム 2020.01.10

【ラグリパWest】まぜ麺作りはラグビーのつながりで。若野祥大/Japanese まぜ麺 MARUTA

[ 鎮 勝也 ]
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【ラグリパWest】まぜ麺作りはラグビーのつながりで。若野祥大/Japanese まぜ麺 MARUTA
店主の若野祥大さんは早稲田大のラグビー部OBである。



 若野祥大(わかの・しょうだい)は楕円球のきずなの強さを知る。

 それは、アカクロを着た時より、まぜ麺に挑む時だった。

 同期の結婚式で上京。入った外苑前のパブには、できあがっている長谷川慎がいた。
 若野は初対面。別の同期である曽我部佳憲はスクラム番長とヤマハ発動機でSOとコーチの関係だった。
「彼、京都でラーメン屋をやろうとしてるんですけど…」
 聞いた瞬間、番長はスマホを取り出す。

 同じ京都人の中村直人と通話する。サントリーや日本代表で左右のPRとして試合出場した2人の間では話が早い。
 中村は酒類販売「なおかつ」の社長。御所や鴨川が間近で風致や人通りが抜群の河原町丸太町の物件や内装業者を紹介してもらった。
 早稲田の悩みを中央と同志社が解決する。

 若野は今でも忘れない。
「恩人の方々やと思っています。ラグビーのつながりのすごさを実感しました」
 2人の助力もあって、「Japanese まぜ麺 MARUTA」は無事に開店にこぎつけた。

 この店の基本は名の通り「まぜ麺」だ。
 中華麺はパスタのリングイネに似た平打ち。冷か温か、5段階ある量、6段階ある辛さの3つを選ぶ。

 どんぶりの底にはだしが潜む。カツオ、サバ、豚骨などで味を取り、醤油などを合わせたものだ。麺とその上に乗ったチャーシュー、京都名産の九条ネギ、揚げごぼう、半熟卵をともに混ぜながらいただく。

 麺はもちもち。だしはあっさりながら、うまみが残る。どんぶりの上のものはするする胃袋に入っていく。残っただしに、炊き込みごはんを入れれば大満足。
 まぜ麺の並は880円、炊き込みごはんの小は100円(税込み)だ。

 この店は居酒屋使いもできる。黒枝豆やポテトサラダなど酒のアテは10品以上。日本酒は地元京都の「澤屋まつもと」など5、焼酎は7銘柄。ビールやワインもある。

「つまんで、飲んで、食べて、という感じで居心地のいい店にしていきたいんです」
 若野は目じりを下げた。

 その出身は神戸。2歳上の兄・耕大のあとを追って神戸高入学後に競技を始めた。
 神戸高の創部は旧制神戸一中時代の1926年(昭和元)。兵庫県下では最長の歴史を持ち、全国大会には9回出場している。県下トップの公立進学校でもある。

 早稲田には現役合格。一般受験組ながら、スピード豊かなFBとして3年時(2005年度)の筑波や立教戦などに出場した。
「ちょっと試合に出してもらっただけです」
 謙遜するが、1年上にNO8佐々木隆道(日野)、下にFB五郎丸歩(ヤマハ発動機)らがいた。大学選手権では2、3年で優勝、1、4年は準優勝。輝かしい時代に生きた。

 早稲田ラグビーで最初に来る思い出は、叱りつけられたこと。新人の頃、最上級生のサンダルを無断で履いて外出する。

「帰った時にすぐに謝ればいいものを、ケガをしていた指を見て、『大丈夫ですか』って聞いてしまった。むちゃくちゃ怒られました」
 そらすつもりが大爆発を呼ぶ。

 とばっちりは同期の1年全員に及んだ。
「今でも申し訳ない気持ちでいっぱいです」
 そこから得た教訓がある。
「自分のやったことをきちっと認識して、それに向き合う」
 今の自営業の根幹をなしている。


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