コラム 2019.11.22

【コラム】2019を忘れない

[ 直江光信 ]
【コラム】2019を忘れない
ひいきチームに声援を送る(ニュージーランド戦/撮影:上野弘明)

 9月20日に開幕したラグビーワールドカップ日本大会は、列島に社会現象といえるほどのムーブメントを巻き起こし、南アフリカの3回目の優勝という結末をもって、44日間の熱狂に幕を降ろした。世界最高峰の戦いが毎日のように繰り広げられ、日常生活のあちこちでラグビーの話がかわされる日々は、最高に幸せな時間だった。閉幕からしばらく経った今も、ふとした瞬間に大きな喪失感に襲われるのは、いかにワールドカップが心の大部分を占めていたかの証だろう。

「大」の字をいくつでも重ねたくなる成功の原動力となったのは、いうまでもなく日本代表の快進撃だ。

 勇敢にして果敢な姿勢は日本人の魂を揺さぶり、活力と独創性に満ちた攻守は、目の肥えた海外ファンのハートをわしづかみにした。初めて伝統国以外で開催されるワールドカップで、もしホスト国の戦績がふるわなければ、盛り上がりに欠けるのではないか——。そんな不安は、ジャパンがアイルランドを破った9月28日以降、誰も口にしなくなった。

「1億2千万人に、ひとつだけ証明したい。僕たちが強いということを」

 9月13日に開かれたウェルカムセレモニーでキャプテンのリーチマイケルが発した言葉は、国内の枠を超えて地球規模で証明された。選手、スタッフ一丸となった想像を絶するほどの努力の成果だ。正しい準備を重ねれば、ジャパンはこんなにも強くなれる。それまで「どうすればそこへ行けるのか」だった世界のトップ8は、「これだけやればここに来られる」に変わった。この違いが日本ラグビーに与える影響は、とてつもなく大きい。

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