インゴールで何を話すか。
「TALK&FIX」で、修正力を伸ばす。プレー中のコミュニケーションのヒント
試合で実力を発揮するのは難しい。
身につけたスキルが機能しない、予想とは違う展開になってしまう…。
そんな時、「自分たちのラグビー」に立ち戻るために必要なのが、試合中の修正力だ。
基礎となるのは、チームメートとのコミュニケーション。試合後にビデオを見ながら反省するよりも、試合中に修正をして勝利をつかみ取ろう。静岡聖光学院が採り入れている「TALK&FIX」(トーク&フィックス)の手法は、早くも同校から他競技強豪チームに伝わり始めている。同校リーダーシップコーチに、その採り入れ方をきいた。
*本記事はラグビーマガジン7月号(5月25日発売)を一部再編集したものです
協力◎静岡聖光学院ラグビー部
講師◎小寺良二[アクティブラーニングトレーナー/静岡聖光学院リーダーシップコーチ]
こでら・りょうじ/アクティブラーニングトレーナー●1982年9月28日生まれ、36歳。羽幌高−米国・レイクランド大−(株)リクルートを経て独立。高校時はラグビー部所属(FB、SO。北海道国体選抜)。大学ラグビー推薦入学などの進路は選ばず、米国の大学へ。リクルートを経て起業。高校、大学へのアクティブラーニングプログラムの導入、教員向けファシリテーター育成、アスリートへの主体性開発支援(JOC、静岡聖光学院)などの活動にあたる。
◼️「話した」だけでは、
修正にならない。
リーダーシップコーチを依頼いただくにあたって、先生からのオーダーは「試合中のコミュニケーションを強くしたい」というものでした。
これはラグビーの重要な競技特徴とつながっています。
ラグビーでは、指導者はいったん試合が始まると選手に指示ができませんよね。試合中に自分たち、相手の状況を見極めて、 意志決定して、チーム内で共有して次のプレーに向かう。
教育分野においては「プロジェクト・ベースド・ラーニング(Project based learning)」と呼ばれる学習形式。ある目的に向かって自分たちで意思決定をしながら、物事を進めていく学習形式を、グラウンドでやっている状態です。
例えば、トライを取られた後に、「次のキックオフは、全力で飛び出していこう」と自分たちで決めたとします。この場合、同じ内容を監督に指示された場合と比べて、どちらが決めたことを遂行するでしょうか。行動心理学的には、自分で決めた子達の方が高い確率でミッションを実行します。
それがうまくいった場合の喜びや意欲も、両者では大きく変わってきます。選手自身が「自分で決める」ことは、スポーツ全般ではもちろん、ラグビーにおいては特に重要な教育的要素なのです。
一般的には「指示待ち」の子が増え続ける中で、この競技の体験を持つ人たちは、「自分の頭で考え、自分たちで決めて行動すること」に対して積極的になるでしょう。
自ら取り組む体験を通して、何かを獲得していくことは、大学受験改革で新たに採用され重視される、アクティブラーニングそのものです。
そして、自分で考え、決めることは、試合に勝つ上でも、とても重要な要素に違いありません。