海外 2019.05.03

サンウルブズの浅原が見つめ直したい、形と「自信」。

[ 向 風見也 ]
サンウルブズの浅原が見つめ直したい、形と「自信」。
中央に立っているのがサンウルブズの浅原拓真(撮影:山口高明)

 4月26日、東京・秩父宮ラグビー場。スーパーラグビーの第11節に挑んだ日本のサンウルブズは、序盤から劣勢だった。対するハイランダーズにスクラムで後手を踏み、防御の穴を次々に破られた。

 ここで流れを変えるべく投入されたのが、浅原拓真。身長179センチ、体重113キロの31歳で、チームが発足した2016年から在籍する右PRだ。この日は0-26とされた前半28分、先発の山下裕史に代わって本職の位置に入った。いざグラウンドに立てば、最前列で組むスクラムについてこんな感触を抱いた。

「(自軍の)3番に対して1、2番が押してくる」

 山下や自身の入る右PR(3番)が、相手の左PR、HO(1番、2番)に挟まれる形で苦しめられている。自身が味方のHOと連携を取り、対応するしかない。後半からサンウルブズのHOに入った堀江翔太もそれに合意し、なんとか形勢逆転を図ったのだ。

「(自身と相手の1番との)1対1にするか、僕が(味方の)HO(2番)に言って(自軍の2番、3番と相手の1番=左PR)と2対1を作るかという感じでいきました」

 もっとも終わってみれば、「いい時と悪い時の差があって……」。近年のサンウルブズは日本代表と同種の戦術を採用するが、今季のスクラムに関しては事情が違う。

 2月からラグビーワールドカップトレーニングスコッド(RWCTS)を動かしている本体では、長谷川慎スクラムコーチが8人一体型の低い形を唱える。一方、サンウルブズではニュージーランド出身のマーティ・ヴィール スクラムコーチが指導。昨季までサンウルブズも兼務した長谷川コーチとは異なる形を用いている様子だ。一部では「(ヴィールの)色がわからない」という声があるなど、試行錯誤の感がにじむ。

 浅原が今季のサンウルブズに合流したのは、3月18日。それまではRWCTSで長谷川のコーチングを受けていたとあり、いまのサンウルブズでももっとまとまりのあるスクラムを組みたそうだ。ハイランダーズ戦での「いい時と悪い時」との差について、こうも言及した。

「悪い時は、LOとPRがセパレートしちゃう感じがあったんです。それは今後の課題かな、と思います」

 日本の軽量級のチームが巨躯に組み勝つには、8人が素早くまとまって前のめりに圧をかけたいとする。ところが現状では、しばしば2列目のLOが長く構えたままとなってしまっている様子。サンウルブズのLOには、もっと素早くヒットを仕掛けて欲しいと浅原は考える。

 チームは結局、0-52で落とした。スクラムの形を確立させたいと言った浅原だが、フレームワークを共有したいとの思いは攻撃中も抱いている。

 この夜は孤立したランナーが再三、接点で球を奪われ、サポートの遅れが指された。しかし、その解決策を問われた浅原は「自分たちのシステムのなかで、ラグビーをやりたいです」と応じたのだ。事前に定めた陣形で攻め続けるうちは、ランナーへのサポートはそう遅れないと見る。

「『今週はこのシェイプで行く』と決めたのなら、そのなかで(攻撃したい)。(ランナーが)そこから外れちゃうと、(サポート役の)反応も遅れる。立ち返るところはあるんだから、ちょっとミスが増えても『自分たちのやる(べき)ことをやろうぜ』というマインドが必要。もうちょっと、(全選手が)自分たちを信じなきゃだめです」

 2季目終了時まではチームが実施した全ての海外遠征へ参加したタフガイ。ハイランダーズ戦後からのオーストラリアツアーにも帯同し、5月3日はブリスベンのサンコープ・スタジアムでレッズとの第12節に挑む。狼たちを、信じた道へ進ませる。

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