コラム 2019.04.16

【ラグリパWest】6人からの再スタート 常翔啓光学園

[ 鎮 勝也 ]
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【ラグリパWest】6人からの再スタート 常翔啓光学園
常翔啓光学園の6人のラグビー部員たち。前列左はリーダーの大津直人。後列右はバレーボール部から途中入部した木田匡哉。後方左にそびえるのは学校の新しいシンボル「クライミング・ウォール」



 常翔啓光学園が再スタートを切った。
 部員は6人である。
 ラグビー経験者は半分。あとは野球やバレーボールをしていた。

 前校名の啓光学園時代を中心に全国大会を制すること7回。歴代3位の記録が残る。
 81回大会(2001年度)からは、戦後唯一の4連覇も成し遂げた。

 今、視界にあるのは過去の栄光ではない。未来である。

 大阪府の春季大会は合同で出場する。1963年(昭和38)の創部以来初めてだ。
 近隣の牧野、枚方(ひらかた)、北かわち皐が丘、枚方津田、長尾と「A」を結成した。新入生の出場は、安全面から認められない。

 予選リーグの初戦は4月7日だった。上宮太子に17-26。2戦目は14日だった。近畿大付に0-61。連敗で春の公式戦を終えた。
「みんな頑張ってくれました。15人制でしか感じられないこともある。よかったです」
 今年38歳になるOB監督の川村圭希には満足感がある。

 今年1月の新人戦は10人制に登録しながらも棄権した。
 新3年生の全5人、新2年生の2人が勉強などを理由に退部したからだ。
 昨秋の全国大会予選は15人制に出た。第一地区の決勝トーナメント1回戦で日新に12-19。敗戦直後、7人が抜けた。

 川村の表情は曇る。
「僕がプレッシャーをかけ続けた結果です。戻ってくれるのを待っていたんですが…」
 絶対的な目標は全国大会出場。しかし、今の部員たちにそんな野望はない。

 その状況を見かねた吉田聡が声をかけた。合同を取りまとめる牧野の監督である。
 川村は振り返る。
「ご縁を大切にさせてもらいました。生徒たちからも大会をひとつ空けた分、試合をしたい気持ちが伝わってきました」

 吉田は1994年度の高校日本代表のコーチもつとめた。守口東の監督時代、全国予選決勝に出る。68回大会(1988年度)だった。得点は3-29。くしくも対戦相手は啓光学園だった。花園出場は21大会ぶり2回目。まだ全国頂点には至っていない。
 吉田はこのチームの輝き始めから知っている。当時の教え子には人気漫才コンビ「中川家」の兄・剛がいる。

 20人に増えた仲間はラグビーが第一ではない。競技推薦で大学を狙う者も皆無だ。
「いややったら帰れ、やる気がないんやったら出ていけ、じゃあないんですよね。言葉の選び方、練習メニューを変えるなど、やり方はいくらだってあるんです」
 川村は指導の中で気づきを得る。


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