【ラグリパWest】2年目はチームとともに飛躍。 コカ・コーラ WTB津岡翔太郎
9月1日、ヤマハ発動機戦で深紅の背番号11をまとった。
リーグ戦初出場、初先発。しかし後半、絶対的なトライシーンを妨げられる。
タッチライン際の40メートルを最速で逃げる。ボールを地面につける寸前、ゲリー・ラブスカフニに182センチ、88キロの体は吹っ飛ばされる。
「悔しかったです。あんなことは初めて。斜め後ろから角度をバッチリ合わされました」
南アフリカから来た同じ学年のウイングに国際レベルを思い知らされる。
3-43の敗戦はにがみを増幅させた。
翌週のパナソニック戦では連続先発を決める。前半10分、リーグ戦初トライも挙げた。ただ、うれしさは微塵もない。
自分にとってホームに等しい佐賀での一戦で17-62と大敗したこともあるが、初戦の不甲斐なさが残っていた。
リーグ戦出場はこの2試合のみだった。
雪辱、そして自己目標を達成するため、実践しだしたことがある。
「どんなことでも1位を取ろうとしています」
外国人選手に勝ったり、国際大会に出るためには、些細なことでもこだわりを持って臨む大切さに気づく。
「今まで人と競ったことがなかったのですが、どっかで1位を取っている人でないと、日の丸は背負えんと思うようになりました」
60メートルを2往復するシャトルランでもぶっちぎりのトップを続けるようになる。
津岡は能力が高い分、執着や主体性が薄かった。余裕の裏返しである。
福岡・城南中では、「ダンスをするつもり」が、1学年上の牧野内翔馬(現NTTコミュニケーションズ)に、ラグビー部に引っ張られた。その脚力に目をつけられた。
佐賀工では高1の1月から、高3の4月にかけ、1年半ほどラグビーができなかった。股関節を3回骨折する。復帰して、最初に声をかけてくれたのが帝京大だった。
大学では、1年時の朝日大戦(51回大学選手権、83-12)や4年時の成蹊大戦(対抗戦、70-0)に先発する。
しかし、同期には尾崎晟也(サントリー)、1年下には竹山晃暉(パナソニック)らがおり、試合数を重ねられなかった。
コカ・コーラには社員として採用された。業務は精神的な成長を助ける。
所属する東福岡支店のベンディング事業部で自販機の補充などをする。
「雨の日も風の日もこういうことをしている人たちがいるのかと思うと、ボタンを押すときに感謝の気持ちを持つようになりました」
感謝があれば人は成長する。周囲が手を差し伸べ、より高みに導いてくれるからだ。
チームは昨季の入替戦でNTTドコモに24-33で破れ、トップリーグ落ちする。
今年はワールドカップによる変則日程で入替戦がない。それでも前向きだ。
「カップ戦、トップチャレンジを勝っていきます」
昨季はリーグ戦とそれに伴う順位決定戦、そして入替戦と11戦して全敗した。
今のコカ・コーラにシステムは関係ない。必要なのは白星の積み重ねだ。
他者との勝負に目覚め、同時に謝意を理解するようになった津岡。抜きんでた身体能力で、チームをけん引しなければならない。それが課せられた使命であるからだ。