防御で勝負。43年ぶり埼玉県新人大会優勝の浦和高校、全国選抜の準備すすめる。
2月下旬のある午後、右足首を捻挫している松永拓実主将は別メニューのトレーニングを終えた後、仲間の練習を見守っていた。
県大会の準決勝で足首を痛めた。しかし、その後の試合にも直訴して出場。テーピングで患部を固め、チームの核(NO8)としての責任を果たした。
小学校に入る前からワセダクラブでプレーしている同主将が、仲間について話す。
「初心者が多いので、その瞬間の状況を見て、判断して動くのは苦手なところもあります。でも、決めたことをやり切る力はあるんです」
ひたむきなディフェンスは、このクラブの伝統だ。攻撃ではキックで敵陣へ。そしてモールで武骨に。それが、このチームが得意としているスタイルだ。
松永主将は同期でラグビー経験者が自分だけという状況を嘆かない。
「他のスポーツをやってきた人たちは、それぞれ、いいところを持っている。それをラグビーに活かしてくれます。今年のチームは体は小さいけど、チームワークがいいんです。仲間意識が強い」
ただ、関東新人大会では足りないものも露わになった。
「フィジカルがまったく足りませんでした。そして意識が低かった。県内で勝つことを目指していては、関東や全国では戦えないと分かりました。目標は花園ですから、選抜でもいろんなことを学びたい。関東新人大会で分かったことにそれを加えて、強いチームになりたいと思っています」
授業が終わった後の午後4時前から2時間強練習するのが日常。その後、夜9時まで開放されている教室、図書館で勉強してから帰宅する生徒も多い。
松永主将は「意識を高く持ち、時間をうまく使ってクレバーなラグビーをやりたい。(部員の)人数が少ないことも長所にしたいです」と言う。
今年からチームの指揮を執る三宅邦隆監督は同校OBで、前任の小林剛監督のもと、7年間コーチを務めてきた人だ。
同じ筑波大卒の山本義明部長とともに、砂場でのコンタクトプレーの徹底など、丁寧な指導をする。
練習の合間に、選手同士で話し合わせる時間を設ける。それが三宅監督のスタイルだ。教え込むより、考えること、見つけ出すことを促す。
「試合で失敗しないため、練習で小さな失敗をするような練習をしています。県大会ではしっかりディフェンスをして、エリアを考えてプレーし、FW中心でロースコアに持ち込む戦い方がうまくいきました。ただ、運もよかった。すべての部分をもっと積み重ねていかないといけない」
OBでもある三宅監督は、このクラブが大切にしてきたことをよく知っている。
「プレーではディフェンスです。ここは毎年、自分たちの強みにしていかないといけない。それと、これは学校の方針でもありますが、自律すること。自分で考えて律する。そういう人間になることがラグビーでも大事だと思っています。このスポーツを通して、世界をどこかで支えるリーダーになるための準備をしてほしい。そうなることがラグビーでも、人生でも重要です」