ココロも、沸きたつ。W杯開催地・おんせん県おおいたで足を伸ばそう。(別府→由布院 編)
ワールドカップ開催地・大分県を満喫。由布院&別府で、湯気と美味の寄り道
ワールドカップ・ベニューの大分は「おんせん県おおいた」を名乗るほどのお湯どころ、そして美味どころ。温泉地として有名な由布院&別府は、あちこちにラグビーボールの掲示が躍り、すでにワールドカップモードだった。観戦で訪れたらぜひ立ち寄りたいスポットが、ぎゅっと詰まった二つのまちを歩いた(2回連載)。前編はこちら。
寄り道の2日目は由布院へ移動…その前に、モニュメントがあるという別府駅前はチェックするべきと考え寄ってみた。思っていた以上に、興味深かった。
別府●別府駅前W杯モニュメント
2か月に一度、反転する。
別府駅前には、巨大なワールドカップ・モニュメント。この巨大なボールのオブジェは日本が戦う姿になぞらえ『ジャイアント・キリング』と名付けられている。大会開幕までの時を刻む砂時計で、2か月に一度反転する。
今度の「金星」の相手はアイルランド、スコットランドか。ある意味でハードルはこれまで以上に高いが、決勝トーナメントを含めて、また勝利の雄叫びを上げる日本がみたい。
モニュメントの隣でジャパン・ジャージーを着せられているこの人は、別府観光開発の父と言われる油屋熊八(1863-1935)。
かつて荒涼とした地熱地帯で『地獄』と呼ばれていたこの土地を、斬新なアイデアと発想の転換で一大観光地に化けさせた実業家だ。
愛媛・宇和島に生まれ、大阪、アメリカ経由で別府へ。洋式ホテルを建てたり、「山は富士、海は瀬戸内、湯は別府」なんてキャッチーなフレーズを考えて富士山頂に掲げたり、大阪に小型飛行機を飛ばし宣伝チラシをまいてしまったり。「泉都・別府」のブランド確立を進めた。自動車の時代を予見して九州を縦走する道路を構想するなど、九州全体のアクセスも含めた開発をした。初めて女性バスガイドを考案したのもこの人だ。
アメリカから、人家もまばらな別府に来たとき、熊八さんは44歳、江戸・文久生まれの人としては結構なご年齢だったはずだ。
失敗してもへこたれず、新しい土地で次々とアイデアを打ち出し実行する姿が想像され楽しい。前しか見ていない。彼の突進からパスを受け、今走っているのが別府の人達なのか。思えば、ネットで話題となった「湯~園地」の仕掛けなど、ここはやはり売り込み上手、おもてなし上手の土地なのかもしれない。
さて、由布院へ移動。かつて熊八さんが、この人こそはという別府のお得意さんをわざわざお連れしたという地が、「別府の奥座敷」由布院。
雄大な由布岳など1000㍍級の山々に囲まれた一帯は、豊富な湯量と美しい自然を兼ね備えた、憧れの国民保養温泉地だ。
由布院●束ノ間
「ゆっくり」に、かえろう。
「1泊、2泊ではなく、3泊以上は逗留して心と体を整えるところ。湯治の文化に戻ろう――そんな思いで創られた施設です。温泉重視のお客様には特におすすめ」(庄司宇志さん)
温泉は自然の一部。湯の色はいつも青とは限らない。変わっていく彩りを楽しもう。
由布院●B-speak
ふんわり、しっとりしたやさしい口どけのロールケーキ。
「先代の社長が『地元の子どもたちが食べるおやつを作りたい』と、焼き始めたのが起こりだと聞いています。PロールのPはふんわりのpuffyから」(リーダー・高山香織さん)
観光客が予約してまで求める看板商品は『Pロール』。素材はいたってシンプル。最後のひと口までおいしさが続く。屋号の『B-speak』は、「A級」に対するB級のB(素人)。素人なりにひとつのものに思いを込めて作り続けることでいつの日かモノ(Pロール)が色々なことを語って(speak)くれるようになる、といった意味が込められている。
由布院駅前にも美味しいお店がいっぱいだ。
由布院●由布まぶし 心(しん)
ここのお米を食べてほしくて
「由布院でとれたものを食べてほしい。とりわけおいしいお米を味わってもらえる商品はないか…と考えて」(女将・森政泉さん)
ひつまぶしにヒントを得た、県のブランド牛「豊後牛」をふんだんに使った『豊後牛重』と、県産「ハーブ鳥」などを合わせた『地鳥重』。女将の思いの結晶を持ち帰ることができる。お重(器)も素敵。
名残惜しい由布院を離れ大分へ。スタジアムの確認である!