国内 2016.11.21

攻める桐蔭、守る慶應。プライドを懸けた戦いは桐蔭に軍配。

攻める桐蔭、守る慶應。プライドを懸けた戦いは桐蔭に軍配。
後半11分に桐蔭学園SO山田が決めた逆転の“片腕一本トライ”(撮影:多羅正崇)
 11月20日、神奈川・ニッパツ三ツ沢球技場でおこなわれた第96回全国高校ラグビー大会の神奈川県予選決勝は、桐蔭学園が17−14で慶應義塾を下し、2年連続15回目の花園行きを決めた。先制点を許したものの、3連続トライを奪って逆転勝利を収めた。桐蔭学園の藤原秀之監督は、「課題が見つかった。いい勉強をさせてもらいました」と接戦を振り返った。
 キックオフ直後から、両軍のプライドが激突した。
 桐蔭はキックでエリアを獲得することはせず、SH田村魁世のパスから徹底的にボールを動かした。対する慶應は、1人目が足元へタックルに入り、チャンスと見れば人数をかけてボール奪取を狙った。
 攻める桐蔭、守る慶應――。
 譲れない戦いは前半3分、桐蔭の反則から均衡が崩れた。キックオフから自陣22メートル内で約20フェイズを重ねた桐蔭が、ラックでオフサイドの反則。このチャンスに慶應はラインアウトモールからインゴールに迫り、最後はHO鈴木颯太朗がパワフルな突進から先制トライ(ゴール)を奪った。
 タイガージャージィのディフェンスは堅固だった。トライ奪取後も激しいディフェンスで反則を誘い、昨季は花園準優勝だった桐蔭を自陣へ後退させた。前半24分に桐蔭のSH田村に1トライを許したものの、前半は慶應がディフェンスからペースを握った。
 7−5。慶應の2点リードで迎えた後半も、タイガー軍団のディフェンスは「想像以上」(桐蔭・山本龍亮主将)だった。決定的なラインブレイクの兆しはなかなか見えない。それでも桐蔭は、藤原監督が「去年とは違う」と語るアタッキングスタイルで戦った。
 その理由について、NO8山本主将は「相手は後半疲れてくる。揺さぶり続ければ突破できる」と話した。いずれ突破できると信じ、自分たちのスタイルを貫いた。
 その信念は後半11分、23分に結実した。後半11分の逆転トライは、SO山田雅也がディフェンスをかいくぐり、右腕一本でトライラインの先へ押さえた。23分の追撃のトライは、自陣22メートル付近から。慶應がラックへ人数をかけてきたところで左サイドへ展開し、WTB大木魁が裏へ蹴り込む。混戦からボールを確保して、LO高橋広大がグラウンディングした。
 後半27分、慶應は相手ゴール前でボールを奪って、大外にいたNO8の北村裕輝主将がスコアした。ゴールも決まって3点差に迫るが、届かなかった。インジュアリータイムにボールを失い、桐蔭がボールを蹴り出してノーサイド。鉄笛が鳴ると、勇敢なタックラーたちはその場に崩れ落ちた。
 予選会から参加した今年5月の「サニックス ワールドラグビーユース交流大会」で、桐蔭に次ぐ7位だった慶應義塾高校。試合後、稲葉潤監督は「勝たせてあげたかった」と選手に心を寄せた。
 一方、桐蔭・藤原監督は「フォワードは頑張った。バックスは赤点」と厳しい表情だった。志高く見据えるのは、12月27日に東大阪市花園ラグビー場で開幕する全国大会だ。
 好敵手との戦いを通して、課題を見つけた“東の横綱”。チームの完成度をさらに高め、昨冬を越える結果――全国制覇へ突き進む。
(文:多羅正崇)

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前半3分に先制トライを挙げた慶應のHO鈴木(撮影:多羅正崇)

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表彰式。神奈川県代表は桐蔭学園(撮影:多羅正崇)

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