国内
2016.11.20
帝京大、明大を破って対抗戦6連覇。それでも不満足だったのはなぜ?
大学選手権7連覇中の帝京大が、11月20日、所属する関東大学ラグビー対抗戦Aで6年連続優勝を決めた。
東京・秩父宮ラグビー場で明大との全勝対決を42−15で制しながらも、岩出雅之監督は消化不良の感を覗かせる。この日得たタイトルに関しても、大学選手権を見据えてか「学生は、8という数字の方がこだわりがあるのではないかと思います。今日の優勝の思いを大切にしながら、8を達成できる力をつけていきたい」と振り返った。シーズン終盤にある日本選手権(国内最高峰のトップリーグ勢と対戦)でも、頂点を狙う。
11月6日には秩父宮で、早大を75−3と下していた。大学日本一15回の古豪を相手の快勝劇を経て、岩出監督は「いい試合をするとそっちに頭が行くから、違うことやろう」。ボールを横に動かすことを意識したという早大戦前から一転、肉弾戦の技術と縦に抜け出すランナー周辺での継続プレーなどに注力したようだ。
「帝京の強さである、縦の部分を忘れてしまわないように」
試合が始まれば、接点の脇からLOの姫野和樹が、HOの堀越康介が球を拾っては駆け上がる。「縦」への推進力を生み出す。もっとも、敵陣の深い位置まで攻め込みながら明大FW陣にターンオーバーを許すこともあった。
14−0とリードして迎えた前半16分頃、敵陣22メートル線付近右のスクラムから左へ展開。最初にボールを受け取った巨漢WTBの吉田杏が直進も、その左脇の接点で明大の圧力を食らう。対するNO8の前田剛らにそのまま押し戻され、敵陣中盤の接点で反則を犯す。明大に攻撃権を渡した。
FLの亀井亮依主将も反省する。
「自分たちの軽いミスが相手にチャンスを与えてしまっていた部分が多くあった」
明大は「アタックはワイド、ワイドへ」と丹羽政彦監督。件のFW陣の好守から敵陣中盤右のラインアウトを獲得すると、左中間でCTBの梶村祐介がタックラーを2人、3人と巻き込む。
ここから再び右へ展開し、停滞したと見るやFWがラックを連取。改めて左サイドをWTB(試合途中からFB)の渡部寛太がえぐったが、続く右サイドへの攻めは落球に終わる。CTBの梶村が対面にいたFLのジョセファ・ロガヴァトゥの足元へキックを転がしたのだが、そのバウンドをものにできなかった。
直後には、ラック周辺に攻撃陣形を配列できずに攻めあぐねるシーンに直面。梶村が「(他の場面でも)裏へ抜け出したところで捕まるところがあったり、プラン通りにいかなかった」と認めるなか、丹羽監督はこう総括する。
「ワイドまで行ったところでミスチョイスが…。学生たちは頑張っていた。(問題は)我々コーチ陣によるチーム全体への方針の徹底のなさ、かな、と思っています」
明大が授かった好機を逸すと、やや消化不良の帝京大も、地力を活かして加点にかかる。
21−8とリードして迎えた後半開始早々。自軍キックオフを敵陣深い位置でLOの飯野晃司副将が確保する。球はハーフ線付近左中間へと戻り、LO姫野が十分な間合いのもと突進。HOの堀越らFW陣はここから「縦」に圧力をかけ、FLのロガヴァトゥ、LOの姫野と立て続けにゲインラインを切る。最後は、負けじと前がかりになる明大防御網の裏へ、SHの小畑健太郎がキック。捕球したWTBの竹山晃暉がトライラインを割るなどし、スコアは28−8と広がった。
守っては、防御ライン全体で鋭い出足を意識。複層的なラインを敷く明大がおとり役の後ろへパスを通しても、その地点にはしばしアウトサイドCTBの重一生が飛びかかっていた。前半39分にトライを決めた明大の新人WTB、山村知也も、王者の「ルーズボールへの反応、1人ひとりのフィジカル、スキル(の高さ)」を認めざるを得ない。
6月に日本代表入りしたSOの松田力也副将は、守備の手応えをこう口にしていた。
「相手は幅を持ってアタックしてくる。そこで受けてしまうとどんどん走られる。ここで間合いを取る(詰める)、というのはイメージしました。まだまだ満足できるところはないです。これからどんどん成長していけるところを、どれだけ伸ばせるか…」
結果よりもプロセスを注視する帝京大は、対抗戦優勝にも「多くの課題が見つかった」と亀井主将は強調する。
12月3日には秩父宮で今季3勝3敗の筑波大とラストゲームをおこない、選手権に向けて仕切り直す。
そう言えば筑波大には前年度、17−20と敗れている(11月29日/東京・上柚木陸上競技場)。亀井主将は、こうも続けた。
「目標は日本一。大学選手権、日本選手権の日本一を掲げています。対抗戦は残り1戦ですが、目の前の1戦、1戦でいい準備をして臨むつもり。特に筑波大学には去年嫌な思いをした。それを経験したメンバーと一緒にチーム全体を引き締めて、いい準備をして臨みたい」
かたや明大は翌4日、秩父宮で早大と激突。帝京大が筑波大に敗れ、この伝統の「早明戦」を明大が制すれば、2季連続の帝京大との同率優勝を決められる。山下大悟新監督が改革を進める早大に対し、「アタック、させないようにする」と丹羽監督。相手の肉弾戦への人数のかけ方やスクラムを組む方法などを具体的にイメージしながら、その攻略法を描きつつある。
ファンが切実な応援を重ねる大学ラグビーのシーズンは、終盤戦に差し掛かっている。
(文:向 風見也)