国内 2016.02.01

帝京大LO姫野、突然の出番にも動じず。タックルとビッグゲインで惜敗に彩り

帝京大LO姫野、突然の出番にも動じず。タックルとビッグゲインで惜敗に彩り
日本選手権は前半途中から出場して奮闘した帝京大の姫野和樹(撮影:松本かおり)
 大学選手権7連覇中の帝京大は1月31日、日本最高峰トップリーグ王者であるパナソニックとの日本選手権をおこなった。東京・秩父宮ラグビー場での一戦は15-49で終わり、HO坂手淳史主将らは悔し涙にくれた。
 前半13分、3年生で主軸を張るLO飯野晃司が肩を痛めて退場した。「本当に、ふがいないという気持ちが一番で…」。無理しろと言われればそのつもりだったが、「(交代が)チームにとって有益であるなら…」。チームにとっても、本人にとっても、重くて痛い決断だったか。
 
 しかし、交代で入ったLO姫野和樹が魅せた。「何かあった時には最初から、出る。その準備をしていたので…」。前半30分頃には自陣ゴール前でビッグタックル。長く続いたピンチを脱し、雄たけびをあげた。
「ゴール前。ドミネートしようと思って入りました。その結果が、よかった」
 さらに後半18分には、敵陣中盤左中間で守備網を突き破る。自慢の巨躯を活かし、大きく突破。今季はかねてから、切り札的な役割を担ってきた。先発出場への意欲を持ちながらも、心を整えている。
「僕は僕で、流れを変えるプレー、試合を決めるプレーという役割がある。それは理解している」
 その結果、PR/HO堀越康介のトライを演出したのだった。
「自分のやれることはボールキャリー。それがトライにつながったことはよかった」
 愛知・春日丘高時代から高校日本代表、20歳以下日本代表に入るなど、世代を代表する実力者だった。帝京大では怪我で戦列を離れることも少なくなかったが、転んでもただでは起きなかった。雌伏の季節はウェイトトレーニングに注力し、いまは大学入学時よりも10キロ以上大きな身長187センチ、体重112キロのサイズで屹立する。辛苦を超えたからか、生来の茶目っ気ある気質に礼節をにじませるようになった。
「上級生としての自覚が、帝京大のよい文化。それが自分を成長させてくれた。怪我から復帰して、試合に出られるようになって…。まだまだ未完成なので、これからももう一段階、成長したい」
 この日はLO飯野に加え、やはり3年生のLO金嶺志が足首の故障で前半21分に退いた。LO姫野は「辛さもわかる。ただ、怪我をしてしまったものは…仕方ない。また前を向いて、切磋琢磨できたら」と、丁寧な口調でエールを贈った。
(文:向 風見也)

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