国内 2016.01.01

走って、走って、組んで…。明大が「失速」を解消して日本一へ

走って、走って、組んで…。明大が「失速」を解消して日本一へ
1996年度以来、大学日本一から遠ざかっている明大。王座奪還のカギを握る田村煕
(撮影:松本かおり)
 2016年1月2日、関東大学対抗戦Aの古豪、明大が、5大会ぶりに大学選手権準決勝に帰って来る。
 就任3年目の丹羽政彦監督は、事あるごとに「失速メイジと言われないよう頑張ります」と口にしてきた。昨季までは充実した戦力から健闘が期待されても、シーズンの終盤に失速してきた。主力が怪我した際、他の戦力にもトラブルが生じたのだ。今季はその対策として、夏場の練習量を増加させた。チームの底上げを図った。指揮官は「(控え選手を含めた)全体のレベルアップがテーマでした」と話した。
「もう一度うちが攻め直すためのキック」などで攻撃を引っ張るSO/FB田村煕は、当時、こう現状を語っていた。
「シーズンに入ってからタフに戦えるような練習をしています。去年までは誰か(主力)がいなくなったらぶれたりしていて、スタッフの方もそれを気にされているようだった。今年はきつい練習の時、監督たちが声をかけるようになっていた。選手もそれに応えようとしています。僕的に、ラグビーを始めてから自分のチームでの日本一を経験していない。学生のうちに、それを味わっておきたいと思います」
 今季就任した元申騎FWコーチは、肉弾戦での激しさと技術をインストール。「コンタクト大好きな人間を育てたい。小手先のプレーなんて、絶対にさせないからね」。LO小林航、FL田中健太らが巨躯を密集へねじ込む。選手権6連覇中の帝京大・岩出雅之監督は、春先から「元が入ってブレイクダウンはしっかりしてきた」と警戒していた。
 HO中村駿太主将は、下級生の頃から攻守でポジショニングやボディーバランスの良さを示してきた。今季は主戦場のスクラムでも、PR植木悠治、PR塚原巧巳とともに強い押し込みを示す。
 日本最高峰トップリーグのチームへ出稽古に赴いた。元日本代表のPR浅原拓真がいた東芝に対して「自分たちの形を組めれば…」と手ごたえを掴んだり、南アフリカ代表のアンドリース・ベッカーがLOに入った神戸製鋼を相手に「組んだ瞬間、押せない感じだった」と驚いたり。幾多の経験を通し、「スクラムワークの技術のなさを痛感した。トップリーグの選手は、上手かった」とHO中村主将。少なくなかった失敗体験からも、糧を得た。右PRの塚原を相手パックの中心へ切れ込ませる方法など、細やかなスキルを磨こうと思えた。
 準決勝でぶつかる東海大はPR平野翔平を軸に強いスクラムを組む。HO中村らの駆け引きと力感が、勝敗を分けるかもしれない。
(文:向 風見也)

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