国内 2015.12.29

赤べこFWの1番は70kg。小兵プロップ、柴田佑紀の充実。

赤べこFWの1番は70kg。小兵プロップ、柴田佑紀の充実。
写真中央が柴田佑紀。よく動く。(撮影:松本かおり)
 伝統の赤べこフォワードが勝利を引き寄せた。全国高校ラグビー大会(花園)の2日目、岩手県代表の黒沢尻工は25-7で山口県代表の萩商工に勝った。まとまりの良いフォワードがセットプレーで圧力をかけ、ゴール前に行けばモールで押し切る。萩商工の石東正之監督に「ラグビーはやっぱりスクラム。あらためて思い知らされた」と言わせる内容だった。
 終始自分たちのペースで動き続けた黒沢尻工FW。スクラムを終えて、むくりと体を上げるフロントローの中に、特に小さな体躯の男がいた。背番号1を背負った柴田佑紀は、171cmの70kg前後。184cm、116kgの3番・藤井大喜と比べれば、ふたまわりほど小さな体だ。それでもスクラムで押し、ボールを追い、防御に走った。周囲から出る「FWナンバーワン フィットネス」の看板に偽りのない働きだった。
「相手はスクラムで押してくる気配がなかったので、こちらからプレッシャーをかけていきました」
 試合後の柴田は、チームの勝利に貢献した充実の表情をしていた。
 紫波第二中学校3年時、特設クラブ(季節限定のクラブ)でラグビーをプレーしたことがきっかけで、楕円球に魅力を感じるようになった。高校入学と同時に「プロップを」とすすめられ、同ポジション出身の高橋智也監督に指導を受ける。小さな体でスクラムを組むのは辛かったが、着実に力を蓄え、3年生になってレギュラーの座を掴んだ。
「県予選なども含め、トイメンの選手で、自分より小さな人はほとんど見たことがありません。このサイズでも、ひざを落とし、自分の姿勢をとって、LOの押しが伝わるようにすればしっかりとスクラムは組めます」
 レギュラーになって経験値が増え、自信をつけるとともにスクラムの奥深さも知るようになった。「ずっと続けているうちに楽しくなっていったんです」と話す顔は、なぜだか照れくさそうだった。
 周囲からは「体重を増やせばいいのに」と言われるが、あまり多く食べられない体質。だから、ウエートトレーニングに励み、人より強い背筋力を手に入れた。機動力を活かしてよく動き、大声でFW周辺の攻防をコントロール。「その部分は(監督からも)期待されている部分なので」と自分の役割を理解して動く。
 電子科に学び、卒業後は地元で自動車整備の仕事に就く。第一線でやるラグビーはこの花園でのプレーが最後だと思っているから、「一日でも長く、みんなとするラグビーを楽しみたい」と言う。
 次戦(12月30日)の相手は東福岡高校。大型パックにひびを入れる存在になりたい。

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