国内 2015.12.29

日本の「1」観て156センチの「6」が元気に 新潟工がFW活かし2回戦へ

日本の「1」観て156センチの「6」が元気に 新潟工がFW活かし2回戦へ
モールで押す新潟工キャプテンのFL鷲尾裕也(撮影:BBM)
 大阪・花園ラグビー場で27日、第95回全国高校ラグビー大会が開幕した。身長156センチという小兵FL鷲尾裕也ら新潟・新潟工(12年連続40回目)は、岡山・津山工(2年連続24回目)に76-7で圧勝。卒業生のジャパン戦士から刺激を受け、目標の8強入りへまい進する。
 前半2分、敵陣ゴール前右のラインアウトモールでFL鷲尾主将が1トライ目を挙げる。以後、ずっと足を止めなかった。続く7分には、先制時と同じ場所でのモールからWTB澤田尚希のランを交え、密集近辺を攻める。巨躯も揃うFW陣がまとまって前進し、最後はHO内藤勝也がインゴールを割った。
 前半17分のスコアは相手ボールスクラムのターンオーバーが起点で、前半26、31分の追加点は得意のモールがきっかけだった。43-0で迎えた後半からもほぼノンストップで攻めが続き、ベンチからは樋口猛監督が足を掻けという意味で「ドライブ!」と声を枯らした。圧勝劇を終え、指揮官はこう安堵するのだった。
「特に、FWはよかったです。今年はFWで勝負しようとしてきたので…」
 新体操経験のある小型選手として昨季から話題を集めたFL鷲尾主将は、この日も活躍した。モール最後尾から止めを刺したり、球が動くなかで守備網の隙間を潜るようにすり抜けたり。樋口監督にも「ボールが動き出したら、彼は良さを発揮する」と褒められた。
 帰り際、本人は「2回戦でやりたい戦術を隠して、隠して、シンプルに戦えた。次につながると思います」と一言。モールは変則的な進路を取らず「まっすぐ」一辺倒で、ライン攻撃も簡潔な選択に終始していた。
 今秋、卒業生でパナソニック所属のPR稲垣啓太が、日本代表としてワールドカップイングランド大会に出場した。4戦中3戦で背番号「1」をつけて先発し、スクラムとタックルで持ち味を発揮した。プールB・3勝1敗の成績を後押しし、帰国後は母校に帰って報告会などをおこなっていた。樋口監督には「人間性の面でだいぶ、鍛えられました」と畏敬の念を抱き、母校を「ラグビーの基盤を作ってくれた」と捉えている。
 FL鷲尾主将が「先輩が世界で活躍しているのを見ると、自分たちも強豪校を倒そう、と元気になれた」と言えば、来季からスーパーラグビー(南半球最高峰)のサンウルブスでもプレーする稲垣はこう話した。
「(今季のチームは)例年になくコミュニケーションが取れています。主将がよくしゃべっていて、周りにもよく話す選手がいる。いろんな意見を、最後は彼(FL鷲尾主将)がまとめている。レギュラーに1、2年生が多くて、将来的な意味でも楽しみなチーム。一発勝負なので何が起こるかわからないですが、悔いのないようにプレーして欲しいですね」
 稲垣の見立て通り、8月の夏合宿期から「プレーでも日常生活でも、周りを見て全体に指示をする」ことを意識しているFL鷲尾主将は、指揮官にも「いまは、私の思っていることを私が言う前に選手へ話してくれる」と信頼される。30日、埼玉・深谷高と激突する。
(文:向 風見也)

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