国内 2015.03.31

ラストプレーで決着! 天理の「たくさんの手」が魅せるも、桐蔭学園が辛勝

ラストプレーで決着! 天理の「たくさんの手」が魅せるも、桐蔭学園が辛勝

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全国高校選抜大会グループCの好カード。桐蔭学園が天理に競り勝った(撮影:井田新輔)

 スコアは19-19。奈良・天理高(2大会連続5回目の出場)は、自陣22メートルエリアから攻めあがる。勝ち越しを狙う。

 しかし、神奈川・桐蔭学園高(13大会連続14回目)のタックルにつかまる。仰向けにされる。そのまま、接点で反則を取られる。ラストワンプレー。対するSH齋藤直人主将がペナルティゴールを決めた。ノーサイド。19-22で惜敗した松隈孝照監督が「最後、攻めを選択したところは収穫。ここで取り切れなかったことも、糧になる」と笑うかたわら、勝った藤原秀之監督は安堵の表情を浮かべていた。

「どこも、うちが勝っているところはなかった。(天理高は)いいチームですよ…。せっかくだから、(この1勝を)大事にはしたいですね」

 高校ラグビー界における春の日本一を決める全国選抜大会は31日、埼玉・熊谷ラグビー場で予選Cグループの初戦を迎えた。

 昨季は冬の全国高校ラグビー大会(大阪・近鉄花園ラグビー場=当時名称)への出場を逃した強豪校同士。「去年もいいチームだったし、1年間の活動に悔いはない」と松隈監督が語れば、藤原監督は「スタッフの責任が大きかった。『こうなるだろう』という目標設定が選手と我々とで違っていたかもしれない…」。それぞれの思いを抱え、新シーズンを迎えていた。そしてこの日、最後まで結果がわからぬ好勝負を演じた。新潟工(4大会連続6回目)、長崎北(3大会ぶり5回目)を含めた4チームによる同組で、首位となった1チームのみが準々決勝へ進める。

 密集戦を起点に各人の判断力を生かそうとする桐蔭学園高に対し、天理高は鋭い出足の守備とゲインライン周辺での仕掛けで魅せた。7点差を追う後半24分。敵陣ゴール前左のラインアウトから、SO林田拓朗主将、CTB津田剛希らがタックラーにぎりぎりまで近づいてのパスを繰り出す。グラウンド横いっぱいに攻撃が連なり、26分、PR山川力優のトライなどで同点に追いついた。フィフティーンは沸いた。

「(5-14とリードされた)前半は自滅。それが相手の得点につながった。(後半は)ノれば、あとはテンポ(を出す)だけ」

 松隈監督は、反省点を挙げつつも笑顔を浮かべた。最後のワンシーンについては、こうも続ける。

「ウチは、難しいことを全員で時間をかけて完成させるチーム。たくさんの手に(ボールが)渡りますから。(最後の場面)本当に全員がそう(攻めようと)思ったか。全員の意思統一ができていたか…」

 指針はぶれていない。

(文:向 風見也)

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