100回目の早慶戦へ。前哨戦は9点差で早稲田に軍配。
ラグビーの「早慶戦」はこの秋の対抗戦で100回目を迎える。
その前哨戦となる春の早慶戦(招待試合)が6月4日、岐阜の長良川陸上競技場でおこなわれた。
伝統の一戦を一目見ようと訪れた観客は3000人を超えた。慶大の青貫浩之監督は試合前、「普通の試合ではない」と学生たちに伝えていた。
「たくさんのOBやファンの方が応援に来てくれる。早慶戦は自分たちのためだけではなく、そうした応援してくれた方々に恩返しをする場」
台風一過で日差しが強まる中でおこなわれた一戦は、9点差で早大に軍配。26-17と接戦だった。
早大は前半、慶大の強みであるディフェンスに苦しんだ。「試合前から簡単なゲームにはならないと分かっていた」と大田尾竜彦監督は言う。
試合開始のキックオフで、WTB矢崎由高がジャンプ一番でマイボールにしたが、慶大のNO8冨永万作、CTB三木海芽のタックルに阻まれた。
数分後に再び敵陣深くでチャンスを得るも、今度はHO中山大暉、FL田沼英哲のタックルで押し戻される。先制トライは好調のスクラムから12分にようやく奪った。
ゴール前の押し合いでターンオーバー、SH宮尾昌典が拾い上げ、CTB野中健吾がポール脇に飛び込んだ。
対する慶大はFB今野椋平の好キックで敵陣に入り、15分のPGで点差を詰める(3-7)。その後もCTB三木、FL田沼が刺さり続けてボールを奪い返したが、敵陣ゴール前でのラインアウトが安定せず、追加点はならなかった。
26分には早大のSO伊藤大祐主将に不意をつかれる。フェアキャッチからすぐさまタップで自陣を駆け抜けた伊藤は、自らあげたパントも抑え右隅へ。一人で完結させるトライで12-3とした。
以後、拮抗した時間帯は続いたが、次にスコアしたのも早大だった。後半5分、SH宮尾のバックフリップパスに反応したWTB矢崎が抜け出し、FL永嶋仁、HO佐藤健次と繋ぐ。19-3とリードを広げた。
敵陣で攻守を展開できた早大は、20分にもゴール前でCTB野中のチョークタックルを起点に攻守逆転。SH宮尾がパスダミーで抜け出し、そのままポール下に入った。
慶大にとっては直前にグラウンディングを阻止できていただけに、手痛い失4トライ目。3-26とされてから2トライを奪うも、9点差まで迫ったところで力尽きた。
「練習してきたディフェンスをうまく出せたと思います。後半は中だるみする時間帯もありましたが、最後まで諦めず自分たちがやってきたことを出してくれた。 ただ、9点及ばなかったのも事実。真摯に受け止めて、秋にまたチャレンジしたい」と青貫監督は話した。
勝った大田尾監督は、「ブレイクダウンにかける迫力や人数といった、慶應さんしかやっていないことを体感できたのはよかった」。
フォーカスしてきたコリジョンバトルを、後半に修正できたのは収穫だ。
「後半からは1人目のキャリアーが相手の2人目までファイトできた。それで良いボールが出るようになったと思います」
昨季の選手権決勝での大敗(対帝京)を踏まえ、この春は「フルコンタクトの練習を格段に増やした」という。
「ボールの使い方や攻め方、サインプレーは対抗戦が始まるまではやらなくていいかなと。まずはとことん体をいじめ抜いて、土台づくりをしていきます」
4季ぶりの大学日本一へ、準備を進める。